2014年9月14日
銚子川 岩井谷



謎・・・


PHOTO GALLERY


三平滝(しゃべ)は、謎に満ちている。ネットでは、滝下部の凄まじき噴出を見ることができるが、全貌は、全く分からない。また、沢登りのガイドブックに僅かに掲載された写真だけでなく、川崎実さんの「秘瀑」でさえ、その謎を解くことは出来ない。

いったいどんな滝姿をしているのか、大きく深いことが予想される壺にもそそられる。色々な要素を考えると、夏場に来たかったところだが、不安定な天候が続いたため、好天が予想されたこの日が、今シーズン最初で最後のチャンスとなった。

銚子川第二発電所から巡視路に入っていくが、滝前へのアタックに考えたルートは、三通り。そのための装備や100m以上のロープが重い。



途中、前を歩いていたひこさんは、気付かずに通って行ったが、ふと見ると蜂の巣と思われる物に蜂が群がってるのを見つけ、思わず「あっ」と大声を出してしまう。その瞬間、群がっていた蜂が、空中へと離脱。標的は、もちろん私。

鉢巻きを外して振りかざし、ひこさんにぶつかりそうな勢いで必死に逃げたが、頭、腹、腕の三カ所を刺されてしまう。何とか振り切ったが、頭への一撃が特に痛く、蜂に刺されたのは、人生初体験、ショックと息切れで、しばらく寝転がって休憩。ひこさんは、幸いにも無事だった。

この後、巡視路は、尾根を乗越し岩井谷へと降っていく。



まだ日が差さない谷間に支流の長瀑が、僅かに見える。



岩井谷に出ると、少し日が差してくるが、谷の奥は、まだまだ暗い。それにしても凄い渓相で、なんとも不気味。





手前の滝は、水がチョロチョロ。取水してるはずなので、三平滝に近付くには、ちょうど良いくらいか。



三平滝が、近付いてきているはずだが、もちろん、その姿は、全く見えない。堰堤の向こうの壁は、ありえないようなツルツルの垂壁。



川崎さんは、「秘瀑」において、「三平滝の迫力は、見なければ実感できないだろう。巨大な井戸の底のような滝壺。轟音と滝壺の波動だけが伝わって、滝そのものの姿は滝壺からは見えない。発電用の取水口と堰があり、それに至る吊桟道、鎹による足場が設けられているが、そうしたしっかりしたルートが確保されていても、どこかしら不安に襲われる恐ろしげな雰囲気を持っている。辺りはすべて飛沫で濡れて夏でも震えがくるほど寒い。まったく地獄の底のようである。」このように書かれているが、実際にそこに立ってみると、全くもって恐ろしげで近付きがたい。続けて記述されているのは、「この滝の高巻きは左岸の長瀑が懸かる岩場を登る。」???左岸になんて渡れないし、堰堤の上の空いてるところを飛び越えるのか。まさか。

そして、「関西起点沢登りルート100」には、「堰堤に打たれた鉄筋から滝壺に下り立ち、左岸の細い流れのある岩壁を2ピッチ攀じ、・・・」と同じようなことが書いてある。しかし、鉄筋から滝壺になんか降りることはできない。堰堤を乗り越えて、泳げということか。遡行図には、何カ所か「泳ぐ」と書かれているが、三平滝にその記載は無い。

ネットに上がっている最近の記録でも三平滝は、右岸から大きく巻いていて、左岸からの記録を見つけることは出来なかった。そんな訳で、ルートの検討段階から、どうやって左岸に渡るのかが、最大の謎だったが、現場に来てみても、その謎が、解ける事は無かった。



一方で、堰堤の下流側なら鎹を使って降りることができ、左岸側へと難なく渡ることが出来る。この左岸側の堰堤にひっついている壁を見上げ、ここしか無いのかという感じ。なんとなく登れるような、それ程難しくないようにも見える。

ひこさんと代わる代わる途中まで登ってみるが、上で落ちるとえらいことになりそう。ハーケンとカムで支点工作するも、完璧には決まらず、上は、さらに支点がとれないように見える。登れそうで登れない、なんとも悔しいが、諦めるしかない。



もう少し下流側が登れないかと偵察したり、さらに下流からの大巻かと考えるが、決定打は無い。なんやかんやと時間が経ち、滝壺にも日が差してくる。



ひこさんが、見てくると言うが、堰堤へと岩場をトラバースするため鎹と堰堤の下半分の鎹が切断されていて、簡単ではない。岩場の下をへつり、アクロバティックな身のこなしで、堰堤の上に登っていく。



帰って来たひこさんは、「滝は、ちょっとしか見えませんが、今、滝壺がめちゃくちゃ綺麗です。」と目を輝かせている。それではと、堰堤の上に登ってみると、これは凄い。下部のほんの少ししか見えてないのだろうが、虹を架けた三平滝の瀑水は凄まじく、滝壺の美しさも比類無い。





しかし、飛沫と風が容赦なく襲ってきて、こんなに天気が良いにも拘わらず、一瞬にして寒くなってくる。滝と滝壺を見渡し、目が釘付けになったのは、虹が弧を描く先の岩場。そこは、左岸壁が90度折れ曲がっていて、僅かな窪地があり、滝を見るならあそこしかないと思えた。

ひこさんに泳ぐぞと手で合図し、急いでロープに足がかりになる輪を何カ所か作りセット。そして、滝壺へとゆっくり降りていく。水に入ると予想より冷たく感じる。下からまたひこさんに合図し、意を決して壁を蹴った。



堰堤の間から水と一緒に放り出されてはたまらない。窪地目がけて一生懸命に泳ぐ。波の勢いを押し切って、なんとか辿り着いたのは、窪地ではなく、堰堤と窪地の間。

ツルツルの岩場に手がかりは無く、なかなか上がることができない。何回も波に持っていかれそうになりながら、ようやく指で掴んだのは、工事の時の物と思われる鉄筋の残骸。そこにスリングをフリクションノットで巻き付け、セルフをとって一安心。ふり返ると、三平滝が凄い。

続いてひこさんもゆっくりと泳いでくる。そのスリングにさらにスリングを繋いでトラバース。そして、念願の窪地へと達した。



ここへ来て初めて分かるが、滝は下流から見て90度以上曲がっていて、右岸に大きく張り出した壁が、滝を神秘のベールで隠している。



ひこさんも「これはレアですね。」と何時になく感動している様子。まさかここで滝前昼寝をするわけにも行かず、一生懸命撮影している。そのひこさんが撮影した動画で、三平滝の瀑水と爆風を感じてほしい。見ることができない場合は、こちら



壺に湛えられた水は、限りなく美しいが、迫ってくるのは、絶えることのない波動。



驚くことに滝裏には洞穴があり、さらに張り出した右岸壁下部で腰を打った水が飛散し、もうもうと水煙になって舞い散る。





滝は、どこまでも大迫力。壁は、どこまでも垂直。遙か上流から流れ降り、壺に湛えられた水は、どこまでも透明。素晴らしき絶景に感謝。



ここは、そんなところであるとともに瀑水と爆風が打ち付ける極寒。泳いで濡れた体は、乾くことが無く、着いてから慌ててきたジャケットも、難なく風が通り抜けてくるように感じる。もう少しゆっくりしたいところだが、もう体が危険信号を発している。



反対側から見ると、滝壺を横断するよりも岩壁沿いから堰堤沿いに進んだ方が楽そうに見える。吸い込まれるとやばい放出口は、つっばって越えれば大丈夫そう。それに、降ろしたロープが、ちょうど放出口辺りに漂っている。その通りに泳いでみると、思った以上に楽だった。

しかし、ロープがあるとはいえ、堰堤を登り返すのが一苦労。寒さに震えたまま泳いだ体では、全く力が入らなかった。









往きは、暗かった谷間に日が差し込み、明るく美しい。下流側の吊り橋を渡った所で、体を暖めて下山した。









私自身の中で三平滝は、謎であると共に憧れ。素晴らしいであろうと妄想すればするほどその想いは強くなっていった。

実際に会った三平滝は、美しくも厳しく、妄想を越える素晴らしい大滝。初秋でありながら極寒だったこの日を決して忘れることはないだろう・・・

ひこさん、どうもありがとうございました。



撮影機材

OLYMPUS OM-D E-M1
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

Panasonic Lumix DMC-FT4