2008年8月9-10日

奈良県 天川村 上多古川本谷 阿古滝谷

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

もうカムに足を向けて寝れません…

 

 

S君がまた沢に行こうと言ってくれた。どこに行こうか二人で検討し、岩屋谷のようにハードではなく変化に富んだ面白そうな場所ということで、上多古本谷から阿古滝まで遡ることに決定。たいした悪場はないと思っていたが、途中の七つ釜のゴルジュは、なかなかの難物で、今回も多くのハプニングが待っていた。

 

林道が荒れる手前のスペースに駐車、パンをかじりながら準備をしていると、S君が秘蔵のカムを持っていこうかどうか悩んでいる。カムとは岩溝に差し込んでプロテクションをとるギア式の高級な道具だ。私は「そんなもん使うんか?」と声をかけるが、まだ悩んでいる様子。そんなこんなで準備完了し林道をテクテクと出発。鉄の橋を渡り山道を行くが、暑いので下から入渓すればよかったと後悔、ブナ又出合からやっと水と戯れ遡行開始。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

直ぐに多古の滝が現れ美しい姿を見せるが、水が少ない。この分だと阿古滝は、涸れ涸れ状態かなと心配になってくる。しかし、やめるわけにもいかず、左岸から越えていく。

 

PENTAX Optio W60

 

そして双竜の滝、やはり水が少ないが、緑に包まれ洞門の滝が背後に迫る景観は誠に美しい。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA50-200mmF4-5.6ED

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA50-200mmF4-5.6ED

 

洞門の滝も飛沫が殆ど飛んでこない程度の水量、手前のリッジを登り右岸の踏み跡を行く、落ち口に続くチムニーの手前からは上ルート下ルートのどちらでも行けそう、上ルートをとると最後少し切れていたが、へつるような感じで越えた。

 

PENTAX Optio W60

 

そしてS字状に曲がったゴルジュが異様な景観を見せる。砂利で埋まってしまったような淵を奥まで進むと12m滝が懸かる幸次郎窟だ。入り口まで戻って左岸から高巻き、上の滝も一緒に巻いて降りた。

 

PENTAX Optio W60

 

そしてまた10m滝の登場、ここは左側が登れるらしいのでS君が取りつくが、途中から次の一歩が出ないらしく難儀している。結局、ちょっと無理と降りてきた。でも何か行けそうな感じがするので替わって登ろうとしたが、次の瞬間、ツルッと滑ったかと思うとトントントンとお尻でバウンドして滝壷へ急降下、最後は覚悟を決め両手を広げてバランスをとり見事に着水を決めた。水深も腰までで荷物も大丈夫、二人で大笑いしたが、矢納谷で痛めた尻を何回も打ち付けたのか、暫く動けなくなってしまった。

 

PENTAX Optio W60

 

仕方がないので、右岸の残置ハーケンと短いロープのかかるところから巻くことにし、どんどん高度を上げていく。壁が立ってきて岩屋谷を思い出すような泥の堆積部分があり、S君はかなり苦労して登っていった。続いて私もジワジワと登るが、ホールドが無く、泥を全部落としても下はツルツルの岩だけ、後ほんの2~3mだが、滑って落ちると下まで真っ逆さまだ。S君にヘルプを出すが、支点になるような物が何も無いらしい。ところが「ちょっと待って」と一言、暫くしてロープが降りてきた。ハーネスに結んで、またジワジワと登りだす。上でS君が「ロープに頼らず自力で登って」と言っている。汗が噴き出すばかりでなかなか上に進まないので「ロープ掴んでゴボウで登るで」と叫ぶと、上でも何か叫んでいる。「買うて」とか「登って」とか聞こえたので、「買うて」はほっといて、エイヤッと気合い一発ロープに体重をかけると、しっかりと固定されたロープがピンと張って体は簡単に上に達した。ロープの先をよく見ると、「おぉぉ~」溝にがっちりと食い込んだ二つのカムが見える。カム様カム様ありがとう。この後も立った壁が続いている。ロープを着けたまま私が先に登って行く。際どく高度感もあるが、泥壁ではないのでバランスをとり何とか登れた。そして上の太い木でビレイを取りS君を迎えた。谷に降りると、斜滝の向こうに高い壁が狭まるゴルジュが続いていて、奥に煙突の滝が僅かに見える。威圧感のある凄い景観だ。

 

PENTAX Optio W60

 

左岸を際どくへつって奥へ行くと、煙突の滝の下部と美しい釜が見えてきた。威圧感はさらに増し、大きなスケールで上に続いている。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

煙突の滝の突破は、この谷一の悪場らしい。嫌な思いを振り切り右岸ルンゼから取りついた。途中から念のためロープを出してランニングビレイを取って登っていく。そして、落ち口の方へトラバースして、そこからさらに上へ、ここからは直上ぎみで高度感も凄いが、木の根っこ等がしっかりとあり、さっきの巻きに較べると全く楽に上に達した。煙突の滝の上には、二つの滝があり、一緒に巻いてから降りた。そして、大きな釜に15mの滝が落ちる多治良淵に到着。右岸支流からも30m程の滝が落ち、癒しの空間が広がる。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

休憩しているとゴロゴロと雷が鳴り出したので、急いで左岸から巻いていくと谷は広いゴーロ状、ゴルジュを抜けたようだ。雷が勢いを増す中、降ってこないことを祈りながら大岩を越え進んでいく。竹林院谷出合い付近に広い場所を見つけたので、タープを張り、枯れ枝を集めてタープの下に放り込む。やがて雨がパラパラと降り出し、この程度かと思っていると、ザーという音とともに突如豪雨になりタープの下に隠れた。横から雨が降り込んでくるが、どうすることも出来ないのでじっと絶えるだけだ。頭上で凄まじく鳴る雷が本当に恐ろしい。S君がワインを美味そうに飲んでいるので、酒の飲めない私も一口ゴクンと飲むと眠気が襲ってきて、膝を抱えたまま眠ってしまった。気がつくと、リクエストしていたカレーがもうでき上がっていて、食べると暖まり元気が出てきた。肉を焚き火で焼く予定だったが、我慢しきれないのか、S君はストーブと鍋底を使って肉も焼き出した。鍋底で焼いた肉もなかなか美味い。そうこうしているうちに雨も上がり、焚き火をすると、前回はあんなに苦労したのがうそのように瞬く間に大きな火が立ち上った。シュラフカバーだけでかなり寒かったが、爆睡モードで朝になった。

 

PENTAX Optio W60

 

ゆっくりと準備してスタート、直ぐに8m滝の懸かる竹林院谷出合、上方には大きな壁が見え右岸にも25m滝が落ちている。昨日の豪雨による水量増加を期待して大岩の中を登って行くと朝の光線に輝く六字の滝が目前に迫ってきた。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

大岩壁の向こうの空は、大雨の通り過ぎた後で青く澄みきっている。しかし、水が少ない。環境も宿防の影響か良いとは言えない。ここは、あまりお勧めできる場所ではないと思う。立派な立派な姿の六字の滝、いろんな点で残念だ。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

戻って巨岩が立ち塞がる谷をさらに遡っていく。簡単には越えにくい岩が詰まっているが、全身を駆使して登って行くと、やがて二股らしき場所に到着した。左が阿古滝谷かと思うが、どうもはっきりしないので、使い方もよく分からないまま持ってきたGPSで確認すると、どんぴしゃりその場所を示している。左の壁を木の根っこを掴んで登り、続く滝も左を登って阿古滝谷に入っていく。さあ、もう一頑張り、傾斜の強い巨岩帯をどんどん越えていくと、前方に大きな大きな壁が見えてきた。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA16-45mmF4ED AL

 

あれ~、滝はどこや、阿古滝はどこや~、ワイドな壁は水で濡れているが、流身がない。よく見ると上方から吹き出す僅かな水が見える。S君も「これを見る為にここまで登ってきたのに悲しいですね。」と言っている。

 

PENTAX K20D smc PENTAX DA50-200mmF4-5.6ED

 

しかし、逆光線が落ち口に差し込みだすと、ジャンプした水飛沫が浮かびあがってきて、水の生命の輝きを見せてくれた。辺りの景観も素晴らしく、行動食を食べたり記念撮影をしてゆっくりと過ごした。

 

最後に二人で雄叫びを上げ、阿古滝の巻きを開始、岩壁の基部に沿って左にどんどん降って行く。こんなに降るのかと思っていると、大きなルンゼ状の割れ目が現れ、これを登ると阿古滝道に達した。阿古滝道は、山抜け等で際どく不明瞭な部分もあるが、多くの赤テープが先へ導いてくれる。長く変化のない下りと暑さにふらふらしながらも、迷うことなく林道に達した。車まで林道を戻りながら、あの泥壁上で溝にガッチリと食い込んだカムを思い出していた。