2014年6月15日
松木川 小足沢



揺るぎない姿・・・


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皇海山の東、松木川に注ぐ小足沢は、入り口から凄まじいゴルジュを形成し、そこに素晴らしい大滝があるという。写真で見ても、その姿は、とても素晴らしく、はんぺんさんから耳元で「こあしざわ」と軽く100回以上ささやかれては、行かない訳にはいかない。天候に恵まれたこの日、我々も挑戦する時がやってきた。

銅親水公園からスタートし、先ずは、松木川左岸沿いに延びる林道歩き。松木渓谷沿いの山々は、銅山の製錬所から出る亜硫酸ガスや山火事などで、草木は、枯れ果ててしまい、林道沿いも廃棄物の堆積、廃村となった松木村など、荒涼とした眺めが続いている。そして、車止めゲートのある広場からは、その特異な山並みに目を奪われる。



少し進むと、対岸に立派な滝。近付いてみたいが、がまん。



ジャンダルムと呼ばれる鋭鋒。一時は、全く緑が無かったらしいが、植栽により、緑を取り戻しつつあるように感じる。









右岸から見事な連瀑となって支流の沢が入ってくる。丹平治沢やったかな。





2000mにも遙かに届かない稜線ながら、まるでアルプスの高峰のよう。そして、その上に残る立ち枯れの木が、なんとも不気味。



天気は、最高。



またまた滝〜。



対岸に鋭く入るウメコバ沢。







ようやくという感じで、目的の小足沢。この高い両岸に守られた滝を越えていかなければならない。



小足沢大滝、この滝を見た人は、殆ど無く、岡田敏夫氏の「足尾山塊の沢」にその記述があるのみらしかった。それでも、コアな滝屋の中に、ここを目指す者が現れるのは、当然の流れ。近年、大滝への到達に成功し、そのルートは、二つ。

一つは、一本東にある三沢から尾根を乗越し、大滝の滝頭から懸垂下降。もう一つは、右岸の岩稜を登攀し、弱点を突いて下降。大滝の懸垂下降のルートは、この時点では、帰りがよく分からなかったし、何より滝横にロープを残しては、景観が台無しなので却下。右岸岩稜登攀ルートは、大滝下の20m滝?を懸垂下降して松木川へと戻ったが、下降用の支点は、古〜い残置ボルトで、新たな支点は、作りにくいらしかった。できれば、古い支点での下降は避けたく、安全な帰還ルートを確保したいところ。

何とかならないかと、地形図と睨めっこした結果、松木川をもう少し西へと進むと、少し緩いルンゼがあり、ここから小足沢右岸尾根に乗り上げれば、登りだけでなく、下降も問題ないように思われた。実際には、そのルンゼは、下部に岩盤が張り出していて、もう少しだけ西寄りの斜面から取り付いた。



ガレてザレた斜面を登り切ると、うまく尾根に出ることができ、そこからは、なんとも爽快な眺め。







この尾根を南東へと降って行き、滝音を聞いて、左へふり返り気味に見ると、大滝の落口の輝きが見える。写真を撮るのを忘れた。





途中、尾根がスパッと切れ落ちていたが、うまく左から巻いて通過。



そして、下降ポイントが迫ってくる。滝に近いルンゼは、ちょっと急で、少し下流寄りの最も傾斜が緩そうなルンゼから下降。微妙な傾斜に念のためロープを出すが、ゆかちゃんや嫁さんにも担いでもらって、総延長110m用意したロープは、この時に使った30mだけ、簡単に滝前へと到達した。







小足沢大滝は、噂に違わぬ素晴らしさ。落口から解き放たれた水が、上段から下段へと複雑に流れを変える。その輝きと飛沫は、まさに瀑水。





飛沫で満たされた空間は、どこも逃げ場がなく、嬉しい悲鳴。舞い上がる水煙と流れゆく透明な水、凄まじい滝音に我らの雄叫びが吸い込まれていく。















考えた通りのルートで松木川へと戻れ、大満足。



そして、往きに確認した大滝下に続く滝へ。





この滝も格別。大きく深い釜は、吸い込まれそうな美しさ。





揺るぎない姿、小足沢の大滝は、そんな言葉が似合う素晴らしき滝だった。両岸高く立ちはだかる壁は、滝下まで強固そのもの、その基盤は、崩壊の岩が堆積していたり、土壁が露出した危なげな台地とは、一線を画す。それ故に流れゆく水も清冽で、大滝下の滝は、その深い壺に、どこかで見たような深く透明な水を湛えている。

そう、それは、ここからは遠いが、慣れ親しんだ豊かな自然に溢れる美しき滝達と同じだと思えた・・・

はんぺんさん、ゆかさん、どうもありがとうございました。



撮影機材

OLYMPUS OM-D E-M1
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
LUMIX G VARIO 14-45mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.
LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm/F4.0-5.6 ASPH/POWER O.I.S.

Panasonic Lumix DMC-FT3
Panasonic Lumix DMC-FT4

6 コメント

  1. はんぺん

    大変お世話になりました。
    100回もささやきましたか?せいぜい80回くらい・・・

    ロープもトンカチもフル装備で臨みましたが、第3のルート、バチッと決まって感動しました!
    時間はかかりますが条件良ければ何度でも行きたくなる滝ですね。今度はも少し身軽で行きましょう!

  2. パンダ

    はんぺんさん

    滝前に出て、直ぐに曇ってしまったのが、ちょっと残念でしたが、素晴らしい一日になりましたね。
    もう少し滝前に早く到達できれば、よりいいような気がしますし、また違う作戦が頭に浮かんできました。

  3. ふぇるめーる

    パンダさん

    先日はありがとうございました。お蔭様で凄い風景を堪能できました。そして奮闘お疲れ様です。
    滝のあり方のインパクトというかあれから2~3日は興奮が冷めやらない感じでした。

    >小足沢
    なにやらドロミテのような岩場が見られますね。
    ジャンダルムという地名が複数あったとは知りませんでした。
    複雑な地形から察するにいろいろなルンゼに滝が懸かりそうです。

  4. 那ぁ

    日本離れした景色にウットリです。
    開けた谷の素晴らしさを知り、三重以外の沢にも行ってみたいと最近思っています。

  5. パンダ

    ふぇるめーるさん

    こちらこそありがとうございました。
    あの狭い滝前は、忘れることのできない凄い空間でしたね。
    想像を超えるハードさでしたが、辿り着けて本当に良かったです。

    松木川沿いの特異な景観は、中国の桂林を思わせました。ここへ注ぐ支流の滝は、冬になると完全氷結し、クライマーで賑わうようです。

    ジャンダルムは、固有名詞ではなく、前衛峰のことで、各地にあるようです。

  6. パンダ

    那ぁさん

    はい、あまり経験したことのないような景観にびっくりでした。
    三重の沢は、もちろん素晴らしいですが、他所の沢も違う魅力があって、興味は尽きないですね。

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