コンスタントライティング・・・
ヘッドランプは、どんどんと高性能化し、ルーメンを目安とするパワーは上昇の一途、一体どこまで向上するのだろうか。軽く使いやすく高性能になり、デザイン以外どれも同じように見えるヘッドランプだが、メーカーによる考え方の違いが製品の特徴となって現れているのも事実。
例えば、LOST ARROWのspring 2015のカタログからBlack Diamond、ストームのスペックを見てみると、全光束160ルーメン、電池寿命70時間(最大照度)となっている。なんとも凄いスペックだが、誤解を生じる表記である。一方でPETZLのカタログには、「100ルーメンの光を50時間持続させるためには、単4アルカリ電池75本分のエネルギーが必要です。」と書いてある。
この違いは何か、PETZLは、こうも書いている。「高出力のヘッドランプでは、最高レベルの出力が出る時間はとても短く、1時間もたたずに出力は半分に落ちてしまいます。」そこまで極端に落ちるかはともかく、実体験からして当たっているような気もするし、イメージ的には、下図のようになるらしい。
そう、160ルーメンは、新品電池を入れた点灯直後のスペックであって、どんどん落ちていく。70時間(最大照度)は、設定が最大照度になっているというだけで、か細くなっても点き続ける時間であり、決して実用時間ではない。そんなことから、PETZLは、一定の照度を保つというコンスタントライティングを提案し、その機能を持った物を製品化している。
それでは、実際にテストしてみよう。左がストーム、右がティカ R + 。ストームは、少し前のモデルなので160ルーメンはないが、高性能なのは間違いないところ。ティカ R + は、コンスタントモード三段階の真ん中、80ルーメンを6時間保つ照度での使用。もちろん、ストームは新品電池、ティカ R + は、満充電(リチウムイオンリチャージャブルバッテリー)。
下にいくほど時間が経過している訳だが、さすがに点灯直後は、ストームは明るい。但し、明るい部分がちょっと狭い。
ストームは、時間の経過と共にどんどんと照度が低下。これに対してティカ R + は、一定の照度を保持。
上の写真のようにストームが風前の灯火になってしまっても、ティカ R + は全く衰えないのはもちろん、驚くことに、さらにパワーを出すことすら可能である。ボタンのダブルクリックでブーストモードに移れば、10秒間ながら最大パワーで照射してくれる。
夜間歩行を考えた場合、ある程度の照度で照らし続けてくれ、遠くを確認したい時に最大パワーを出すという考え方は、非常に実用的ではないだろうか。普通のヘッドランプが、最大パワーを出せるのは点灯直後だけであり、落ちた照度を二度と取り戻すことはできない。
ティカ R + には、さらに進んだ光センサーにより自動で光量が調節されるリアクティブライティング機能があり、近くを照らすと弱く、遠くを照らすと強く、とてもスムースに調整される。
次にBlack Diamondのスポットとティカ + でテストしてみよう。真ん中がスポットにアルカリ電池、左がティカ + にアルカリ電池、右がティカ + にニッケル水素充電池。ティカ + は、45ルーメン、6時間のコンスタントライティング。スポットの点灯直後は、やはりパワフル。
時間とともにスポットの照度が落ちていくのは、ストームと同じ。
ティカ + もブーストによりパワーが出せる。
そして、ニッケル水素充電池は、アルカリより先に暗くなる。エネループに代表される充電池は、強いようなイメージがあるが、単四電池を3〜4本使うヘッドランプでは、どのモデルで試してもアルカリ電池に圧倒的な差で負けてしまう。
この後、ティカ + は、リザーブモードに入り、アルカリ電池であれば、低照度ながら24時間以上点灯し続ける。(その後、どこまで点灯し続けるかは、やってないので分からない)スポットも同様に点灯し続ける。ニッケル水素充電池の方も点灯を続けるが、よ〜く見ると点いているが、殆ど点いてない程にパワーが無くなる。したがって、ヘッドランプにニッケル水素電池を使うのは考えた方が良いかもしれない。
ヘッドランプに適しているアルカリ電池だが、低温になる雪山では、極端にパワーが落ちてしまう。冬場は、高価なリチウム単三にて運用していたが、コスト面では厳しい選択になる。
何とかならないかと思っているときに、PETZLには、カメラのようにリチウムイオン充電池を使うヘッドランプがあるのを見つけ、マイナス20度までの低温対応となっていて、マイナス20度で100パーセントの力を出せるかはともかく、かなり期待できるのではないかと考えた。そんなことから、ティカ R + の導入となった訳だが、リアクティブライティングの他、コンスタントライティングという優れた機能を知り、夏場用にティカ + も導入となった。
お世話になったストームやスポットは、電池管理に苦労しながらも様々な場面で活躍してくれた。しかしながら、夜間行動が少し長くなると良く見えなくなってしまうことだけでなく、中心部がやけに明るく周りが暗いことから、なんとなくぼやけたような感じで見にくいような気もした。ティカ RXP ではなくティカ R + 、ティカ XP ではなくティカ + を選んだのは、スポットビームによる遠方照射よりもミックスビームによる全体的な照射に期待してのこと。比較的ムラの少ないパターンで照らしてくれる。
少し下山が遅れた程度や早朝出発等、普通の使い方であれば、現在の高性能なヘッドランプであれば、十分な性能を持っている。しかしながら、決して褒められたものではないが、少し長い夜間行動や冬場の夜間行動を経験すると、やや不安があるようにも思う。限りあるエネルギーから取り出せる力をどう使うか、コンスタントライティングという考え方は、リスクに対する備えとして、検討する価値があるように思う。
拘りですね!
大したヘッドライトなんて持ち合わせていない私ではありますが、このエネルギーの使い方の工夫には脱帽です。
常々、夜間の可能性がある際は予備のヘッデンと更には電池は必ず持ってはいますが、これもその照度ダウンに対する備えに他なりませんから・・・
車のヘッドライト並みの性能を持ちながら同じようなコンパクトなもの出てこないでしょうか?
難しいですね。
すぎちゃんさん
今の状況は、一昔前から見ると考えられない程に進歩してますね。
ですから、何か技術革新があれば、あっと驚くようなことになっているかもしれませんし、それを期待したいところです。
予備のライトや電池も必ず携行してますが、幸いにしてそれらを使ったことはありません。
レフ機使いの私が言うのも何ですが、リチャージバッテリーって重たくはないですか?
私のパナ製の暗いヘッデンは、本体/リチウムイオン(単4×3個)込み/ニッケル水素2次込みで、
65g/87.5g/101gとなります。どうだまいったかw
臆崖道さん
レフ機用のバッテリー程大きくないので、50gですね。
ストームなら単四x4ですから、たいしては変わりません。
それでも夏場なら単四x3で軽いティカ + で十分かなてな感じです。
アルカリ電池込みで85g、リチウムならさらに軽い、勝った〜
しまった! せめてアルテリアの製品情報を調べてから挑むんだったorz
雪山以外には積極的に闇山行をしない私ですが、スペックを見るとなかなか魅力的な光束ですね。そして星も被写体にしている私にとっては、赤色灯があることも気に入りました。
話は変わりますが、富豪いや負号の私の乾電池は、2次電池とリチウム電池を使い分けています。日帰りの場合はニッケル水素、厳しめの泊山行の場合はリチウムといった感じで。やはりリチウムの魅力(軽さ、持続性、耐寒性)は大きいです。ヘッデンの他にもガーミンGPSやペンタのGPSユニット、携帯の充電器など、泊の場合は携行する乾電池が多くなりますので、重量はバカになりません。
臆崖道さん
リチウムは絶対的に高性能ですが、使いかけの処理に困ったりしますね。心配になって予備の予備を持っていったり。
冬季以外の日帰りには、ニッケル水素よりアルカリがお勧めです。ニッケル水素は、想像以上に弱いですし、万が一の闇行動時は暗くなるのもうんと早いです。アルカリは百均のもので十分で(色々なところで劣らないことが検証されています)、少しでも使うと新に換えれば安心です。
GPSの場合、私は常時ONという使いかたをあまりしませんが、オールシーズンニッケル水素です。微弱な電力を使い続けるためか、一日ぐらい使い続けても特に問題ありません。但し、マイナス20度近くの低温で外に出して置いたりすると、ニッケル水素でも弱いですね。
予備に持って行く電池は、全て軽くて高性能なリチウムです。
ペンタのGPSは要らないんじゃないですか。カメラの時間さえ合わせておけば、時間からガーミンのトラック上に位置を再現できます。
何泊もするときなら別ですが、二泊程度までなら携帯の充電器も要らないような、私は基本的に山では携帯の通信OFFですから、必要性を感じたことはありません。携帯で写真を撮りまくるなら別ですけど。
補足しますと、O-GPS1は沢ではほとんど使いませんが、稜線泊でアストロトレーサーとして使う場合と、撮影した方向と画角を連動して山座同定するときに使っています。カメラ機能付きのガーミンGPSでも同じことができるかもしれませんが。
携帯電話は、山ノ神がスマホで撮影するようになって、泊の場合は充電してあげると喜びます。私のガラケーは確かにほとんど使いませんが。
ところでオリからRAW対応の防水コンデジTG-4が出たので、ちょっと興味を抱いています。
臆崖道さん
なるほど、天体撮影を考えると、やはり持って行きたくなりますね。
TG-4、ある意味魅力的なんですが、小さなセンサーと屈曲光学系レンズの組み合わせでRAWファイルに記録すると、ベイヤーセンサーの欠点が浮かび上がってしまうかもしれません。
一方でJPEGは、カメラのエンジンにより瑕疵の補正が強力にかかりますので使いやすいとも言えます。RAWの展開でも純正ソフトを使えば、埋め込まれた補正情報から破綻の少ない画が生成されると思いますが、LRなどの汎用ソフトでは、ここが未知数です。
また、TGはオートブラケットができないのが、非常に残念なところです。
またまた、この手のカメラの中では優秀なTGのレンズですが、リコー(ペンタ)のWGと全く同じレンズだと思われます。
実売価格的にTGとWGには大きな差があり、WGを選択しましたが、WGはペンタらしいとても良いカメラだと思います。
それでもTGにオートブラケットが付けば、いってしまうかもしれません。
ペツルのコンスタントライティングは一定照度を保ち電池容量を最後の一滴(^^)まで使い切る非常に魅力的なものですね。ただ、今回のテスト方法に気になった点があるのですが・・・。
ペツルは最大照度ではなく中間照度でテストスタートしているのに対して、比較のBDスポットはスタート時の設定照度が明記されていません。また、ティカR+との比較テストは電池種別が異なるのが気になります。(ストームは新品電池としか書かれていませんので・・・(^_^;)
エネループに代表される充電電池も容量は異なり、また使用による劣化もあるので中々同一条件は難しいでしょうね。
最新の大容量充電電池などの使い勝手が気になるところです。
できれば、ペツルと同様照度にスポットも調光してのテストを見てみたいですね。または、いずれも最大照度にしてのテストスタートとするかでしょうか?写真に経過時間もあれば更に参考とさせていただけます。
個人的にティカ+に魅かれているのでこのような比較テストはとても参考となり興味深く拝見いたしました。
わんだらさん
今回のテストは、あくまで私の実使用を想定して行ったものです。
夜間の歩行時において、ペツルはコンスタントの中間照度ないしリアクティブライティング、ブラックダイヤモンドは、最大照度で使います。(ブラックダイヤモンドは点灯時間の経過とともに見にくくなりますから、最初から減光して使うと十分に見えるかどうかは、やったことがないので分かりません。)
ですから、ブラックダイヤモンドは最大照度、ペツルは中間照度でのテストになりますし、文章の流れからそれはお分かりいただけると思います。
ニッケル水素充電池の容量の違いによって多少点灯時間は変わりますが、いずれにしても常温下において、アルカリ電池には全く適いません。
ティカ R +とストームの比較において電池の違いを指摘されてますが、基本仕様でティカ R +に単四電池は入りませんから、揃えることはできませんし、それに意味があるとも思えません。コスト面も考慮の上、実際に適した電池、あるいは専用電池としてティカ R +はリチウムイオン充電池、ストームはアルカリ電池でのテストです。また、ティカ R +は、リアクティブライティングで使用しますから、それで行うべきですが、私には、その方法を思いつくことが出来ません。
ペツルを最大照度で使えば、短時間しか点灯できないと思いますが、その事は、はっきりと記載されています。一方でストームは、160ルーメンの最大照度で70時間と記載されていて、実際とはあまりに違うことに違和感を持っていました。最大付近のパワーは短時間しか持続しないことを知りませんでし、そのような情報も殆どないことから、参考になるかもしれないと、この記事を書いた訳です。
ヘッドランプは一長一短で、それぞれの製品に適した使い方があると思います。今回のテストは、その優劣を決めようというものではなく、私個人の使用法に適したものを選ぶために行ったものです。気になる点が多々あるようですが、そうであるなら、ご自身でテストされればと思います。
お返事が頂けると思わず、今日まで失礼いたしました。
パンダさまが書かれている、実使用を想定してのテストである旨、了解いたしました。
また、ティカR+の電源仕様についても知らなかったため的外れなコメントになってしまいました。
それぞれの製品仕様ですから、単純比較はできないとのご指摘はそのとおりかもしれません。
リアクティブライティングなる言葉・仕様も知りませんでした。
電池駆動の製品は、その使用できる時間を計るテスト基準がメーカーごとに異なることで比較もできないですし、何より最大照度で70Hとの記載は違和感をもたぜるを得ないとのご指摘は同感です。
ブラックダイヤモンドの製品では、電池の持続時間としてどこかに満月の照度を切るまでみたいに書かれているようですが、照明としての実用点灯とは程遠い気がします。
いっぽう、ペツル製品の図示による電池残容量の変化は分かり易いと感じています。
いずれにしても、単純に比較ができないとしてももう少し分かり易いメーカー仕様書なり製品紹介であればと思う次第です。
私個人比較できるものを持ち合わせておりませんので、このようなサイトを参考にさせて戴いている次第です。
最後に、パンダさまのご気分を損なうような書き込みであったなら申し訳ございません。
こんにちは
これまではBDのスポットを使っていたのですが、
この記事を読んで、ティカ+を追加で買いました。
とても参考になりました。
スポットで山を歩く際は近距離モード(16ルーメン)を主に使っていますので、ティカ+の40ルーメン8時間というのに期待しています
はじめさん
ティカ+導入されましたか。
スポットとティカ+、それぞれに良さがあると思いますから、比較して楽しんでください。
ティカ+はモデルチェンジによりルーメン、照射距離、照射時間などが微妙に変わり、ちょっと気になります。
本日、BDのスポットで電池が半分以上残った(グリーンランプ点灯)状態で、滝に飛ぶ蛍撮影時に使用してきました。
スポットの運用方法としてグリーンのランプがついている時は電池交換はまだしないのですけど、今回の状態ではスポットの16ルーメンモード(90hr仕様)では結構暗いと感じましたね。
結局75ルーメンモード(50hr仕様)で歩いて帰りました。
光の照射スタイルが違うので安直には比べられませんけど、結局は単4電池3本はどれも同じなのですから、○○ルーメンで明るさを論じるよりも、持続時間△△時間でその明るさを類推する方が実用に近いような気がしてきました。
今回ティカ+は持って行ってなかったのですけど、40ルーメンモードは8hr仕様なので相当明るいはずですね
はじめさん
使える電力に限りがあるので、それをどう配分するかということになりますね。
メーカー的にはカタログデータを飾る為にルーメン値を上げ続けなければならないのでしょうが、高いと点灯直後は明るいですが、早く暗くなるだけでなく実用的な照射時間は、より短くなってしまうでしょう。Black Diamondも最近のモデルは点灯時にフルパワーで点かないようになっていて、これらのことを考慮してのことだと思われます。
持続時間がきっちりと把握できるのはコンスタントモードのみになりますから、各社ともこの方向になってくれると分かりやすいのですが、そうもいかない事情があるのかもしれません。
ティカ + の40ルーメンモードは、特には明るくはないかもですが、歩くのに不足は無い程度には明るいでしょうし、何より自分の周りを比較的広く照らしてくれるので、何となく歩きやすい気がすると思います。ダブルクリックすれば160ルーメンになりますから遠望確認もOKでしょう。また徐々に暗くなるのではなく、8時間は照度が落ちないので、ある意味安心だと思います。