2015年8月14-15日
宮川 大杉谷 堂倉谷
深碧・・・
ひさ〜しぶりの大台ヶ原は、ちょっとガスっぽく、絶好の天気とはいかない感じだったが、これから始まる夏のイベントにワクワク。
遊歩道を歩いて行くと、気が早いのか、早くも秋の色がちらほら。
日出ヶ岳を越えて堂倉滝へと降る。何時もながらにしんどく、やっと着いたという感じ。
時々、陽が差して壺が輝くが、シャッターを押そうと思ったら陰り気味になってしまう。それでも、堂倉滝は素晴らしく、大きく深い釜に美しき水を湛える整った姿の滝は、どこでも簡単に見ることができるものではない。
堂倉滝の吊り橋を渡り、次の吊り橋のところから作業道を上がって小尾根へと乗り上げる。
見つけにくいとされる下降のための残置ロープは、慎重に探すと直ぐに見つかった。しかしながら、このロープ、アースカラーのようなアースパターンのような、たしかに周囲に同化していて分かりにくい。
ロープを補助にスルスルと降りていくと、下まで届いてなく、あれれ〜。ここからの方がロープが欲しいけどなあと思っていると、またまた見つけにくいロープがあり、それを使って降りていくと、さらに、もう一本のロープへと繋がるようになっていた。都合、三本のロープが設置されていたと思うが、ちょっと記憶が曖昧。
ガレガレで落石が危ないので、一人ずつ慎重に降りて堂倉谷へと着地。
迸り流れゆく水が素晴らしい。この谷としては、決して水量が多い方ではないのだろうが、一般的には十分過ぎるほど豊かな水量。
歩き出すと、直ぐにあることに気付く。異常なほどに滑りが強く、ラバーソールでは全く歯が立たない。ひこさんも嫁さんも私も恐る恐る足を運んで行く。
これまで、滑りのある沢でも梅雨の大雨が過ぎれば、滑りが流れて歩きやすくなる。そんな概念を持っていたが、それは完全に覆されてしまう。
迫る大滝は、早くも堂倉の白眉か。
計り知れぬ深き壺に湛えられた清き水。そのどこまでも透明ながら濃い色は、大自然の神秘などという言葉では表せない程に深みがある。
雲の隙間から光りが廻ってくれば、谷中が、これ以上ない美しさに満たされる。段を打って流れ下る様は堂々として美しく、何より深き壺の底まで続いているであろう強固な岩が、この揺るぎない姿の源。滝周りは、いっぺんたりとも乱れが無く、その完成された姿は、実に魅力的で悩ましい。
私は、いくら迫力ある圧倒的な大瀑であろうが、滝下にガレが堆積していたり、周りに泥などが乗っていては、その雑然とした環境が気になってしまう。また、流れる水の軌跡が優雅であっても、その水が美しい壺に注がないようでは、簡単に美瀑などと呼んだりしない。
清冽極まる水、乱れなく取り囲む圧倒的造形、豊かな植生などなど、大自然からの贈り物であろう滝や渓は、これらが一体となってこそ、その素晴らしい姿で魅せてくれると思う。
左岸から近付き、壺を泳ぎ渡る。
左岸壁を登って上段下へ。上段も下からでは見えない大きな壺に注ぎ込み、その深い水色に目を奪われる。
ここでも、あっちへ行ったりこっちへ行ったり。
ここの突破は、壺を泳いでからではなく、壺の手前の左岸から巻き上がっていく。
巻き越えて谷に戻ると、スケールが小さくなったようにも思えるが、美しき流れに変わりはない。
浸かったり泳いだりが随所に入る。この時期ならではで気持良い。
この辺りが、中七ツ釜と呼ばれるのだろうか。とにかく水色が深く濃く透明、その美しい姿に立ち止まってばかりで、なかなか先に進まない。ひこさんが、こんなに頻繁にカメラを取り出し、一生懸命撮影している姿は、初めて見るような気がする。
小さな滝に似つかわしくない大きな壺。何故このような地形が形成されたのか興味は尽きない。
穏やかな流れのところでは、立ち泳ぎでぶかぶかするのが快適。何故か水中メガネを装着。
はい、観察観察。もう遊んでばっかり。
大岩も目立つようになり、狭く荒い渓相になってくるが、変わらない安定感が嬉しい。
そして、また綺麗な滝が落ちる開けたところに出る。
滝前でゆっくりしていると、東京から来たというパーティが追いついてきて、「綺麗ですね」と言いながら滝に取り付いていく。4名だっただろうか、それぞれが巧みな技術で突撃し、実に愉快で楽しそう。
我々も行こう。ひこさんは、定石通りに左岸から。
嫁さんは、釜を泳いで右岸から。
私は、滝下部を横切って右岸に出ようとしたが、ヌルヌルと流れに足を取られて宙を舞い、撃沈。諦めて左岸から登った。
ここから先も素晴らしい渓相。泥や砂の堆積はもちろん、倒木さえも見当たらない。
安定しない天候だが、綺麗な淵に陽が差し込むと夢のような光景。滝の落ち込み付近だけ碧いのは何故だろうか。
アザミ谷出合。もう少し行けるかと思ったが、これだけ遊んでいては全く無理で、今日はここまで。
先の東京からのパーティが、既に左岸側の一等地を使っていたので、別の場所を探す。この東京から来られた方も一緒になって泊敵地を探してくれて感謝感謝。結果、右岸側に小場所を見つけ、少し整地して幕を構えた。
この小場所、思ったより快適というか快適そのもの。何故か焚き火も極上で、ひこさんが持ってきてくれたノコギリで揃えられた木々は、これまで体験したことがないような落ち着いた燃え方で、整った形の炭になっていく。
やがて、狭き谷から見上げる空には、満点の星。岩に寝そべってじっと見ていると、どんどんと星の数が増えていく。気がつくと、さっきまで点いていた対岸のパーティの灯りが消えている。もう寝たのかと思っていたら、しばらくして、一つ二つと灯りが復活。どうやら、夜空の美しさを、こちらと同じようにライトを消して楽しんでいたようだ。
夜が明けても良い天気。しかし、谷底には、まだ全く陽が届かず、暗い感じの中を大岩を越えて先へと入って行く。
少し進むと、両岸から岩が張り出し通せんぼ。
この立ち塞がる見事な岩の構えは、この先に続いているであろう奇勝への門のよう。
越えるのが難しいように見えるが、左岸から、うまく巻き登ることができる。
そして、期待の奥七ツ釜。ホールのような釜の造形はもちろん、高く聳える壁とそれを彩る緑との調和も見事。
ドピーカンの影の中、雲天より条件が悪いかもしれないが、頑張って撮影。
もちろん、大きなホールへも陽が届くはずがなく、その底知れぬ深さ故か不気味そのもの。それでも、明るい色となって溢れゆく水は、これ以上ないような美しさ。
遊んでいると、後ろから如何にもできそうな二人組。聞くと、富山から来たというこのパーティ、大杉谷〜堂倉谷と大杉谷の完全遡行を目指し、今日で三日目とのこと。
「素晴らしいですね。○○の沢なんて問題になりません。」と格や権威にとらわれない言葉を残して去っていった。
そうこうしていると、ここにも陽が届きだし、良いような悪いような、なんとも微妙。
嫁さんは、お決まりのように泳ぐが、奥はまだ暗く、怖々。
陽の当たる領域が、だんだんと広がってくるが、全体に廻るのは、まだま〜だ時間がかかりそう。
先のこともあり、残念ながら打ち切って出発。
次の滝も影の中。
滝が影の中になろうと、陽射し溢れる明るい沢は、遡行における感動をより大きくしてくれる。
ちょっと雑然とした部分も出てくるが、綺麗な淵や大釜が依然楽しませてくれる。
立ち泳ぎでゆっくりと釜を泳ぎ、左岸へと乗り上げる。
ひこさんが手を出してくれているが、一人で出来るもんと頑張る嫁さん。
堰堤を見て、チョンボ作戦で林道に上がる。
林道を行くと、進むにつれて荒れている部分が多くなってくる。ミネコシ谷出合を少し過ぎたところで降りやすそうなところがあり、伏流している川床へと下降。
水は直ぐに復活し、またまた泳ぎ。
どんどん泳ぐ。
う〜ん、なんか普通。
谷が狭まりミニゴルジュになるが、困難なところは無い。
石楠花谷出合。
しだいに狭く傾斜を増してくる。
12mとされる滝かな。
左岸壁を登る。
辿ってきた下流域の見事すぎる渓相に較べると、あまり見るべきものがなく、運動ばかりさせられている感じ。また来ることがあれば、全く違う時間の使い方をするだろう。
核心25m?
左岸から登り、上部は右岸から巻く。ロープを出そうかと思いながらも大丈夫そうだったので、全てフリーで突破。
次の滝の上部の乗越しが、事前予習で最も心配したところだが、流身ではなく右岸壁を登って、あっけなく通過。
傾斜が緩み、そろそろ終わりかと思うが、まだまだ滝が出てきて終わらせてくれない。もう滝は、ええわという感じ。
感動のフィナーレへ、いやいや、しんどいだけかも。
それでも、最後に近い辺りは、とても綺麗な森が広がっている。尾根を乗越して登山道に出ることなく尾鷲辻へと飛び出した。
今回は、珍しく最後まで沢を詰めてみたが、上流域には目を奪われるような美しき光景は無く、登攀要素に興味がない私は、あまり楽しめなかったと言えるかもしれない。
それに対して下流域は、豪快かつ美しい景観が連続。水と岩と光が織りなす光景が、とても素晴らしく、未だ脳裏から離れない。
数ある大瀑ではなく、これこそが他の地では中々見ることができない紀伊半島に特徴的な素晴らしき世界ではないだろうか・・・
ひこさん、どうもありがとうございました。
撮影機材
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
RICOH WG-4 GPS
RICOH WG-5 GPS
SWに岩井谷と堂倉谷の継続遡行に行ってきたばかりです。
初めての堂倉谷だったのですが、その美しさと中だるみのない内容に吃驚。
アプローチの良い父ヶ谷と場所を入れ替えてくれれば、
毎月行きたいと思えるくらい素晴らしい谷でした。
厳しい岩井谷と極楽浄土の様な堂倉谷が稜線を挟んで隣り合っているのが不思議でした。
堂倉谷を遡行しながら、パンダさんなら凄い写真を撮られるんだろうなと思っていたのですが、
偶然なのですがこの素敵なレポがタイムリー過ぎて、吃驚しています。
那ぁさん
本当に美し過ぎる渓相にうっとりで、もっと早く来るべきだったと思いました。
遊び的にも撮影的にも、まだまだやり残したことがいっぱいありますので、またゆっくりと訪れてみたいと思っています。
それにしても、岩井谷〜堂倉谷の継続は、凄すぎです。