2015年9月20-21日
尾添川 丸石谷
藪…
不動七重の後、ひこさんとの次なる作戦は、白山の百四丈滝。嫁さんも、このような滝を見たことがなく、一度見てみたいと言うので、三人チームで岩間温泉から出発。
日帰りで突撃する場合、暗い内から歩き出しているようだが、泊計画としたので明るくなってからと、のんびりしたもの。
トボトボと長〜い林道を行くと、滝と堰堤の流れが合わさっていて、なんとも珍しい。
2時間ちょいで丸石谷へ降り遡行となるが、この先に幾つか続く堰堤越えに一苦労。左岸水線に近いルートをとったが、背丈を越えるような藪漕ぎ。帰りに分かったが、高いところに楽な踏み跡があった。
堰堤を越えると単調な沢歩き。
単調さは変わらないが、沢に陽が差し明るくなってくると、やはり嬉しい。
時折、綺麗な淵も出てきたりで、次第に沢らしくなってくる。
う〜ん、長い。泊装備が重い。それでも大きなスケールで両岸とも立ちはじめ、先への期待が高まってくる。
沢が大きく右に曲がり、そこには、崩壊して橋脚だけになってしまったようなスノーブリッジ。
林道終点から3時間ちょい、ようやく黒滝下に続いているらしい滝に到着。
ふり返って見る右岸の壁が圧倒的。
右岸ガレ斜面にボロくなったトラロープがかかっていて、そこから巻きを開始。この後に、まさかの事態が待っているとは、思いもよらなかった。
ガレを登ったところからトラバースで滝上へ。
黒滝が見えてくるが、もちろん、黒滝も巻かなければならない。黒滝の巻きは、草付きと聞いていたので、低い草の生えている高度感満点の巻きを想像していた。この点は、ひこさんも同じ意見。ところが、どうもそうではなさそうで、上を見ると低い灌木で覆い尽くされていて、ルートがはっきりしない。
当たりを付けて藪をかき分け、強引に登っていく。さらに大きなルンゼの頭をトラバースして上流側へと進み、あっきーさんから事前情報として下降ポイントだと聞いていた二本目の大きな木に到達。とにかく藪が大変だったが、言われているような際どい巻きルートだとは感じなかった。
この大きな木から左斜め下にルンゼがあるとの情報。しかしながら、見渡す限り藪でルンゼらしき落ち込みは全く確認できない。これは、下降ポイントを間違っているのか。こう思ったのが全ての始まり。
1本下流側の木の左下には大きなルンゼがあり、ひょっとしてあっちかと、戻って下を覗き込む。この大ルンゼを降ると、どう見ても黒滝の下へと戻ってしまうが、途中から上流側へと藪を漕いでトラバースすれば、ルートが開けるかもしれないし、下の方で回り込める可能性もある。そう思って、ひこさんと二人で降りていき偵察。やはりというか、当然というか、そう簡単にはいかない。少し下は切れ落ちているし、トラバースラインも無理がある。諦めて登り返すが、最後の垂壁は荷物が重いのもあって、もう必死。
その後も、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、降りては登り返し、降りては登り返しの繰り返し。途中、藪の中に細いルンゼがあり、如何にもという感じだったが、少し降ると立った壁が現れ、ここも断念。帰りに分かったが、この細いルンゼもひとつの正解ルートだったよう。何時しか谷はガスで覆われ、日が傾き暗くなってくる。残念ながら、もう下流へと撤退して泊するしかないかもしれない。
それでも、どこかに必ず活路があるはずと、上流側へ最初の木を越えてトラバースすると、開けた比較的傾斜が緩そうなスラブ壁が現れ、これが本当に最後の望みに思えた。そこを、ひこさんがスルスルと懸垂で降りていく。しかしながら、その動きは直ぐに止まり、辺りを見回して首を横に振っている。ああ〜、これで終わりかと思ったが、戻ってきたひこさんは、思わぬおみやげを持って帰ってきてくれていた。それは、ここは無理だが、少し下流側に傾斜が緩そうな怪しい落ち込みが見えたらしい。
またまた戻って、嫁さんが、その落ち込みを目指して藪の中へと入って行き、ひこさんも続く。そんなところを降りれるのかと見ていると藪の中の嫁さんは、どんどん小さくなっていく。私も藪を潜って降りていくと、僅かな僅かな窪みがあり、なんとその直ぐ上には、最初に下降ポイントだと思った木があった。
嫁さんの「行けるで〜」という声と共に、下の方でヘッドランプの灯が点る。登り返しを考え、念のためにロープをセットして追いかけると、少し平坦なところを経て、その先は岩場となった細い枯れ滝のようになっていた。ここもそのまま降りてしまったのかと思いながら突っ張りで降り出すと、「着いた〜」と嫁さんの元気な声。結局、ロープなしで降りてしまったようだ。最後に私も川床へと着地し、黒滝の巻きが終了。なんと6時間以上も過ぎていた。
最初の大きな木から藪を気にせず偵察下降していれば、この浅く小さなルンゼも直ぐに見つかり、なんてこと無かったのかもしれない。しかしながら、植生豊かな藪に覆われたルンゼは全く未体験で想定外。上からでは、とてもそれを見つけることは出来なかったし、藪の下にあるかもしれないと考えることもなかった。藪に対する経験の無さをを痛感。
巻きが終わっても事が終わった訳では無く、泊地を見つけなければならない。三本の光跡を交差させながら、暗い谷間を祈るような気持ちで進む。幸いにも、寝ることが出来そうな僅かなスペースが現れ、ここでもアクシデントがあったが、何とかテントを設営。薪が乏しく風も強い中、苦労して燃え上がらせた焚き火は、激しくダンス。寒いのでもっと近付きたかったが、遠巻きに暖をとる。それでも、最初のソーセージが焼けて口に入れると、何時もながらに、いや何時も以上にうまく、ようやくホッとする。
ここまで来ることができた幸せ、焚き火を囲むことができる幸せ、食べることができる幸せ、寝ることができる幸せ、そして、明日は百四丈滝と会えるだろう幸せ、感謝と安堵の時が流れて行く。
朝になると、雲はあるもののガスも晴れて良い天気。ロープやガチャは、もう要らない。軽い荷物で百四丈滝を目指す。
待望の百四丈滝が、大きなスケールの中に見えてくる。
両岸高く聳える壁が、圧倒的。
豊かな水が迫力の姿で落ちていくが、木霊す滝音は優しく、なんとも不思議な空間。
そんな姿に安心していたが、気付けば全身ビショビショ。舞い散る飛沫は容赦ない。
朝ということもあり、基本的に逆光線。ベストには程遠いかもしれないが、頑張ってレンズを向ける。それにしても、壁がこんなにハングしてたのか、滝と壁、その存在感が凄い。
亀のウロコのような岩の造形も素晴らしく、このような壁は初めて見たような気がする。私が滝に魅せられる「美」という観点においては注文が無いわけでは無いが、滝前は写真では伝わらない素晴らしさに満ちている。
大きくハングした壁からジャンプしているので、滝裏には大空間があり、そこからの眺めには度肝を抜かれた。ゆっくりとした水の躍動とバックに映える爽やかな空、ここでも見たことがないようなスケールの裏見に圧倒される。裏から眺めるには、なかなか良い時間帯だったかもしれない。
濡れた体を乾かしながらテントまで戻り撤収。
またまた天気が悪くなり、ガスが追いかけてくる。
スパッと切れ落ちた素晴らしい黒滝の落口。ここにもガスが忍び寄る。降りてきたのは、この直ぐ横。
ルンゼを登り返す。ルンゼといっても紀伊半島のそれとは違い、殆ど藪。
この小さなルンゼが、唯一緩かった訳だが、それでも結構立っている。
下降点近く、この藪の中にルートを見出すことが出来なかった。このルンゼを下から登ってくると、途中で二股になっていて、我々は右から降りてきたが、左はおそらく下降を諦めた小さなルンゼではないかと思われる。
下流方向へトラバース。
下降途中から見える黒滝。この時はガスが晴れていたが、直ぐにガスに覆われてしまい、滝前へ行くのは諦める。
黒滝下の巻き開始ポイントまで戻ってきた。
帰りも長〜い沢歩き。まるでガスと競争しているよう。
林道終了点へと到着。
最後の林道。頑張って歩こう。
ある程度の難が予想された黒滝の巻き、しかしそれは全く予想外の形で我々の前進を遮った。巻きを通して、ロープを出そうと思うような危うさは感じなかったが、細く浅い下降ルンゼを見つけることができずに悪戦苦闘。また行くことがあれば、もう大丈夫だろうが、このようなことになってしまったのは、藪の中でルートを見出す経験が足りなかったことに尽きる。
翌朝、百四丈滝が爽やかな姿で迎えてくれたことが、何よりの救いだったかもしれない…
ひこさん、どうもありがとうございました。
撮影機材
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
RICOH WG-4 GPS
RICOH WG-5 GPS