2018年4月29-30日
台高 宮川 大杉谷 千尋谷 嘉茂助谷
知られざるニコニコ滝…
2018年GWのメイン計画は、嘉茂助谷にあるらしいゴルジュの下降。昨日からの3名に、あっきーさんと江戸切子さんが加わり総勢5名。下降のために用意した大そうな道具を手分けして担ぐ。なぜか、さらに瑠璃さんもいて、途中までご一緒することに。
大杉谷は新緑な時、その綺麗な眺めを楽しんでと言いたいところだが、重い荷物にヒーヒー。
ようやくという感じで千尋滝が望める東屋に到達し、大休憩。逆光線のために霞む千尋滝は、それなりに水量がありそう。
嘉茂助谷ゴルジュ下降のためのアプローチルートは色々と考えられる。検討した結果、今回は千尋谷を登ってから尾根を越えて嘉茂助谷に入る計画。そんなことで、千尋谷出合を目指して大杉谷へと降りる。
出合付近から見上げると素晴らしい眺め。上部で躍動する白き輝きに胸が躍る。
適当に登って行くと、さらに素晴らしい。落口から大杉谷出合まで続く落水は、どこからどこまでが千尋滝なのだろうか。
ドローンを飛ばす瑠璃さんとはここで別れ、滝の流れを渡り、写真左の岩場を登って行く。
登り出ると、千尋滝が目の前にドドーン。豊かな水量と躍動感を併せもった流れが、お日様を受けて輝く。幸いにも、ここはちょっとしたテラスになっていて、その大きな景観をゆっくりと楽しむことができる。
さて、千尋滝を巻いて上に出なくてはならない。右岸に見える樹林帯が快適そうだが、そこへ行くのは手前に大きな切れ込みがあって絶望的。左岸も、いったん下まで降りなければならないのかと思ったが、うまく岩棚をトラバースすることができ、樹林帯ルンゼへと入る。
後は、一生懸命登って当たりをつけたところからトラバースして千尋滝の落口。江戸切子さんが落口際へと降りて行ったが、私は怖いので少し手前で勘弁してもらう。
上流に続く連滝をどうやって越えたかはよく覚えていない。
滝を越えると広い河原。少し進むと伏流になったのか水が切れてしまう。おいおいと思ったが、さらに進むと水が復活したので、この辺りを今宵の宿とする。
翌朝は嘉茂助谷との間にある尾根を目指して、P802の少し南東から東北東に延びる尾根を登る。荷物が重く、もともときついだろう登りがさらにきつい。
P802で大休憩し、石楠花が彩る尾根を北西へと進む。
何度か枝尾根へと吸い込まれそうになるが、その度に修正して西へと下降する尾根に乗る。
そして、穏やかな流れが見えてきて、最後の急斜面を降り嘉茂助谷へと降り立つ。ふぅ〜
そこから下流へと進むと、直ぐに落ち込みを伴ったゴルジュ地形。
このゴルジュに入って下降するつもりでやってきたが、下流へと続いている連瀑と淵を覗き込んで唖然。
立った側壁の底をとうとうと水が流れている。
これはもう、降りてロープを抜いてしまうと、這い上がることは不可能かもしれない。
ここを辿るには、ほとんど泳ぎ続けることになるのは必至。また、途中で止まって支点を構築るす方法を見出すこともできない。そのまま流されて、最後は大滝の落口から放出されてしまうだろう。そんなことで清く諦めるしかないが、この時点で、ここまで担いできた装備は、ただの重しになってしまった。
さらに下には美しい軌跡を描く大きな流れが見え、何とかその前には立ちたいところ。右岸を巻き降って突破口を探る。最後に小さなルンゼ状のところを念のためロープを出して降りると、滝の右岸上にある大きな棚の上だった。
残念ながら、ここでも滝下には届いていない。さらに下へと考えるまでもなく、滝と深く大きな壺を取り囲むように立つ磨き抜かれた壁を前に、ここまで見てきた以上に降りることが許されないのを感じる。
しかしながら、この滝の美しい姿は、想像を遥かに超える程に素晴らしい。その白き軌跡をどう表現すればいいだろうか。その神秘なる壺をどう表現すればいいだろうか。いっぺんたりとも乱れのない美空間は、よく言われる美瀑という表現では、とても収まりきらない。
ところで、嘉茂助谷といえばニコニコ滝だが、一般的に考えられている大杉谷と出合う長瀑がニコニコ滝というのは間違いらしく、そのことは知る人ぞ知るところだろう。
大阪わらじの会の1967年の記録には、それについての考察があり、当時からすでに最後の長瀑をニコニコ滝と呼んでいたことがうかがい知れる。それが間違いである根拠としては大西源一さんの「大杉谷探検記」があり、その内容(村人が誤って滝壺に落ち、その滝壺の両崖を登ることができず、にっこりと笑いながら死んでいったことからニコニコ滝と名が付いた)から、現在ニコニコ滝とされている滝ではなく、滝壺のある滝が真のニコニコ滝であろうとしている。
この考察には、滝壺のあるのは上段から三段目までで、はいあがれそうにないのは二段目と三段目である。それ故、二段目か三段目を指してニコニコ滝というのが本当だろうが、「大杉谷探検記」には四段の滝には全て壺があるとしていることから、このゴルジュ帯を指してニコニコ滝と呼ぶのかもしれないと記されている。
ただ、ここに記されている二段目と三段目は、三段目と四段目(この美しい滝)の間違いではないだろうか。大阪わらじの会の記録でも、遡行図ではこの滝が四段目であり、四段ともに滝壺が図示されているし、三段目と四段目であれば大杉谷探検記の四段の滝には全て壺があるとも合致する。ところがところが、四段目までのようなものとは違うが、この下の滝にも壺があるので、ことは複雑。
以上のようなことになるが、総合的に考えて群ではないニコニコ滝としては、この滝がもっとも相応しいように思う。
さて、楽しんだ後は、ここからの脱出方法を考えなければならない。滝壺に湛えられた水は、狭き通路に集められて遥か下へと噴射してゆく、つまり直ぐに次の滝が落ちている。
棚の上から下を覗くと、思ったよりも高度感がある。巻き降るにしても懸垂するにしても、左岸の壁はさらに高く絶望的。そもそも、最初の穏やかな河原まで戻らない限り左岸に渡る術がない。右岸の壁の張り出しも、どこまで続いているのか分からない。滝の流れ近くの右岸壁をダイレクトに懸垂したいところだが、下降距離が何とも微妙。
セルフをとって右岸側にある窪地へ降りて、50mロープを二本繋いで投げてみる。しかしながら、滝下は大岩と樹林混じりの複雑なもので、何回も繰り返すがロープの着地を確認することができない。ロープ長50mあれば大丈夫なようにも思えたが確信が持てなかった。
この垂壁をロープが届いているか分からない状態で懸垂する訳にはいかない。登り返して、右岸巻きルートを探る。するとガレガレルンゼがあり、確認をかねて慎重に降って行くと、先はスパッと切れた壁になっていたが、ここからなら問題なくロープが届きそう。懸垂で降りると、次の滝下より少し高いところに着地。一気に飛び出すような落水が見える。
順に懸垂するが、上部のガレルンゼからの落石がビュンビュン飛んでくる。一歩間違えば大惨事になりかねないので声を掛け合って慎重に下降。
壁がハングしている上に下部は抉れているので、途中から空中懸垂。
もう少し降って、次の滝の正面に回り込む。上の滝とは表情が一変、まさに炸裂といった感じで荒々しい。
辺りも原始的な景観で、人が立ち入ることを拒んでいるような秘境感に満たされる。
左岸壁の高さと張り出しがすごい。
ここもまた圧倒的で、もう少しゆっくりしたかったが、時間が押してきたこともあり先を急ぐ。ここからは水線を辿るこもできそうだったが、もうルート工作する時間もないので、右岸を巻いて下降。すると木々の間から、さっきまでいた2つの滝が見えてくる。離れたところからは、まるで巨大な1つの滝のよう。
幸いにも、うまく巻き降ることができ、最後に懸垂で一般にニコニコ滝とされる長瀑の頭に降り立つ。そこは長瀑の落口であり、下からも見える上に続く滝の前。ツルッとミスると下まで真っ逆さまなので、セルフをとって撮影。
右岸壁を登り返して、慌ただしく懸垂に入る。樹林帯の中なので、それなりの安心感があるが、とにかく落ちている小枝などにロープが絡まり、それを解くのに時間がかかる。できるだけ絡まないようにやったつもりでも、どうしても絡んでしまうので、バケツを使うなどのテクニックを習得する必要があるかも。
また、木々の間を通過する時のルート取りが微妙。後続のため、回収のために、ロープが屈曲しないルートを考えて、何回も登り返してやり直す。そんなことで、50m一杯まで下降するのに長い時間を要して、樹林帯を抜けた斜面に降り立つ。まだ滝下までかなりあるが、後は歩いて降りることができそう。全員が懸垂を終えてロープを回収すると、もう辺りは暗くなってしまっていた。
後は登山道とはいえ、みんなフラフラな感じで、暗くなった道を歩くのは辛い。何回か休憩しながら、ゆっくりと進む。そして、日付が変わる頃に道の駅奥伊勢おおだいまで戻ることができ、コンビニ飯で腹を満たした。
嘉茂助谷は、沢登りでも対象にされることが少ないのか、断片的な情報しかなく、多くの謎を秘めていた。そんな嘉茂助谷に触れるにあたっては、できるだけ水線沿いを下降したいという想いがあったが、それは見事に打ち破られた。それでも、その想像を遥かに超えた圧倒的造形や美しさが、決して忘れることができない素晴らしき体験をもたらしてくれた。知られざる台高の宝だと思う…
あっきーさん、江戸切子さん、おでんさん、はんぺんさん、どうもありがとうございました。
LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
LUMIX G VARIO 45-150mm / F4.0-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.
最高の旅でした!ニコニコ滝がまさかあんなに美しい姿、壺を持っていようとは・・・
また機会あれば再訪したいですね。
はんぺんさん
その美しさは、まさに取りつく島がないもので、遥かに予想を超えたものでしたね。
たしか嘉茂助谷の下降は、はんぺんさんからの案だったと思います。
また、魅力的な計画をよろしくお願いします。
すごい写真と記録っすね。楽しんではりますねーー!!!すごー
かまちゃんさん
ありがとうございます。
はい、楽しく苦労してきました。