いちばん大切な人
このあいだ
愛する娘と一緒に
Disneyの映画「美女と野獣」を観に行った
そのアニメを娘が小さいときから
家族三人で何度も見たのを思い出す
愛する娘と一緒に
Disneyの映画「美女と野獣」を観に行った
そのアニメを娘が小さいときから
家族三人で何度も見たのを思い出す
始まって間もなく
溢れ出した涙は最後までまつげを濡らし続け
それが乾くことなくラストシーンを迎える
もちろん映画のように
素敵なものではないかもしれないが
嫁さんと出会った頃のことが
次々と頭の中を駆け巡り
どうすることもできない
溢れ出した涙は最後までまつげを濡らし続け
それが乾くことなくラストシーンを迎える
もちろん映画のように
素敵なものではないかもしれないが
嫁さんと出会った頃のことが
次々と頭の中を駆け巡り
どうすることもできない
いちばん大切な人のことをずっと想っていた
横で静かに涙を流す娘が
何を感じていたのかはわからないが
また違う意味で想い続けていたのかもしれない
横で静かに涙を流す娘が
何を感じていたのかはわからないが
また違う意味で想い続けていたのかもしれない
スモールパンダであり嫁さんである
真佐美と出会ったのは
1989年
私は二十八歳
真佐美はまだ二十歳
胸の奥の震えをはっきりと覚えている
真佐美と出会ったのは
1989年
私は二十八歳
真佐美はまだ二十歳
胸の奥の震えをはっきりと覚えている
それ以来真佐美の人生は私と共にあり
満ち溢れたあらゆる可能性を
私にくれたことになる
満ち溢れたあらゆる可能性を
私にくれたことになる
真佐美とは
何時の間にか一緒に出かけるようになり
もともと二人とも
口数が多い方ではなかったと思うが
二人でいるとお互いに気を使うことも無く
大いに盛り上がった
何時の間にか一緒に出かけるようになり
もともと二人とも
口数が多い方ではなかったと思うが
二人でいるとお互いに気を使うことも無く
大いに盛り上がった
その後も自然と一緒に出かける機会が増えていき
その頃の私は
そのこと自体に何の疑問も持つことは無かった
その頃の私は
そのこと自体に何の疑問も持つことは無かった
しかし今は
これで良かったのかと自問する日々
これで良かったのかと自問する日々
何故にめぐり会うことができたのだろうか
何故に私のような者を受け入れてくれたのだろうか
何故に心が通ったのだろうか
思い返してみても それが不思議でならない
何故に私のような者を受け入れてくれたのだろうか
何故に心が通ったのだろうか
思い返してみても それが不思議でならない
写真といえばフィルム
この世にデジタルな写真が生まれるなんて
思いもしない頃のこと
撮った写真は多くはないが
真佐美が大切に保管してくれていた
この世にデジタルな写真が生まれるなんて
思いもしない頃のこと
撮った写真は多くはないが
真佐美が大切に保管してくれていた
夜景をバックにどうやって写真を撮るのか
そんなことも知らずに適当に撮った
幽霊のような写真でも
二人が写っているだけで嬉しかったのが懐かしい
そんなことも知らずに適当に撮った
幽霊のような写真でも
二人が写っているだけで嬉しかったのが懐かしい
カメラごと海水をかぶったが
写真屋さんが何とか救ってくれたフィルム
埃が付いて傷が入ってしまったフィルム
どうしてもフィルムが見つからずに
唯一残っている色あせたサービス版プリント
写真屋さんが何とか救ってくれたフィルム
埃が付いて傷が入ってしまったフィルム
どうしてもフィルムが見つからずに
唯一残っている色あせたサービス版プリント
そんな状態が悪い写真ながら一枚一枚が全て宝物
心を込めてスキャンした
はは〜ん
ストロボが光っても動いてはいけないのか
スローシンクロによる撮影も
少しはうまくなったかもしれない
ストロボが光っても動いてはいけないのか
スローシンクロによる撮影も
少しはうまくなったかもしれない
男なら車やカメラといった機械ものが好きなのは
普通だが
真佐美は女性ながら
私が好きなものに同じように興味を示してくれた
普通だが
真佐美は女性ながら
私が好きなものに同じように興味を示してくれた
時々こうやって二人で写真を撮って遊んでいた訳だが
この頃に使っていたカメラは
親父のお下がりのCanonの一眼レフ
620だったかその型番すら思い出せないが
このカメラのことは決して忘れたことがない
この頃に使っていたカメラは
親父のお下がりのCanonの一眼レフ
620だったかその型番すら思い出せないが
このカメラのことは決して忘れたことがない
真佐美は「キカイダー01」と勝手に名付けて
とても大切にしてくれた
とても大切にしてくれた
私達二人は
休日はもちろん
平日も時間が許す限り同じ時を重ねた
それは私にとって生きる糧そのものになってゆく
休日はもちろん
平日も時間が許す限り同じ時を重ねた
それは私にとって生きる糧そのものになってゆく
一緒にいるだけで幸せで
他には何も要らないと心の底から想っていた
他には何も要らないと心の底から想っていた
私の車はMTだったが
教習所以来MTを運転したことがないという
真佐美はまたまたMTに興味しんしん
教習所以来MTを運転したことがないという
真佐美はまたまたMTに興味しんしん
「運転してもいい」と聞く一言に
ちょっとコツを教えるとたちまち乗りこなした
ちょっとコツを教えるとたちまち乗りこなした
真佐美は私の車のことも気に入ってくれて
訳あって手放すことになった時は
とても悲しそうにしていた
訳あって手放すことになった時は
とても悲しそうにしていた
そんな真佐美が車を買うことになり
選んだのはユーノスロードスター
もちろんMTなユーノスを手足のように操り
ワインディングロードでは
男顔負けのスピードで駆け抜けた
選んだのはユーノスロードスター
もちろんMTなユーノスを手足のように操り
ワインディングロードでは
男顔負けのスピードで駆け抜けた
その後子供が生まれてからもユーノスは
わが家で「ちっちゃい車」と
親しみを持って呼ばれ
二人乗りながら三人で仲良く乗っていた
わが家で「ちっちゃい車」と
親しみを持って呼ばれ
二人乗りながら三人で仲良く乗っていた
それでも流石に限界が来て
買い換えることになった時
今度はとても悲しそうな顔をする娘と共に
ユーノスが去るのを見送った
買い換えることになった時
今度はとても悲しそうな顔をする娘と共に
ユーノスが去るのを見送った
その日の夜中娘が突然
「ちっちゃいくるま〜」と寝言で叫んだのを
今でもはっきりと覚えている
「ちっちゃいくるま〜」と寝言で叫んだのを
今でもはっきりと覚えている
同じ季節が何回か過ぎ去り
重ねる日々は二人の想いを深めてゆく
重ねる日々は二人の想いを深めてゆく
それでも
わかっていたこととはいえ
二人の道に立ち塞がる障壁は
思ったよりも高く厚い
わかっていたこととはいえ
二人の道に立ち塞がる障壁は
思ったよりも高く厚い
その道の先に確かなことは何もなく
どこに続くのかもわからない
どこに続くのかもわからない
歩いては立ち止まり
そしてまた歩く
そしてまた歩く
ただただ
次の道へと続いていることを信じて
次の道へと続いていることを信じて
歩いても
どこまで歩き続けても
その障壁は高くなるばかりに思えた
どこまで歩き続けても
その障壁は高くなるばかりに思えた
そして
この夢のような日々から
覚めてしまう事を恐れるばかりでなく
この夢のような日々から
覚めてしまう事を恐れるばかりでなく
覚悟していた
欲張るだけでは前に進めない
少なくとも二人の想いは同じ
真佐美と出会えたことそのものが
少なくとも二人の想いは同じ
真佐美と出会えたことそのものが
奇跡
いちばん大切な人と
わかちあえればそれでいい
わかちあえればそれでいい
未来への道程が見えかかって来た頃
また違う困難が待っていた
また違う困難が待っていた
真佐美は体調が急変
劇症的な症状を伴って緊急入院
いたって元気そうに見えていたが
実のところ深刻な病を抱えていた
劇症的な症状を伴って緊急入院
いたって元気そうに見えていたが
実のところ深刻な病を抱えていた
一日も早い回復を祈る中
入院生活の中で医師から告げられた言葉は
とても悲しいものだった
入院生活の中で医師から告げられた言葉は
とても悲しいものだった
「この病気とうまくつきあっていきましょう」
えっ 治らないのか
「子供を授かることは難しいかもしれません」
そんな受け入れがたいこと
静かに耐える真佐美がとても愛おしく思えた
そして気がつくと
二人の想いを重ねた歳月は五年近く
二人の想いを重ねた歳月は五年近く
結婚式当日は
珍しく大阪の町にも雪が降り積もり
真っ白になった世界が祝福してくれた
珍しく大阪の町にも雪が降り積もり
真っ白になった世界が祝福してくれた
授かった尊い命に流す大粒の涙は
儚い結晶よりも美しく
儚い結晶よりも美しく
祝福されての飛び切りの笑顔は
きらめく結晶よりも眩しかった
きらめく結晶よりも眩しかった
授かった命はとても不安定で
真佐美は病院で長期に渡りベッドに釘付けの生活
真佐美は病院で長期に渡りベッドに釘付けの生活
薬の副作用か
手足は猿のように毛だらけになりながらも
ひたすらおなかの中の子を想っていたに違いない
手足は猿のように毛だらけになりながらも
ひたすらおなかの中の子を想っていたに違いない
もう一人のいちばん大切な人が生まれた日は
とてもとても陽射しが強く暴力的に熱い夏の日
とてもとても陽射しが強く暴力的に熱い夏の日
二人の元気な姿と安堵に満ちた空気
そんなごく普通の幸せに包まれた
そんなごく普通の幸せに包まれた
本当にようやくという感じでやってきた
病院を後にする日
病院を後にする日
その時に写した娘を抱いた一枚の写真
この子を想う気持ちで溢れんばかりの表情
この子を想う気持ちで溢れんばかりの表情
真佐美はこの写真が気に入ったらしく
結婚式の写真から作ったテレホンカードと一緒に
肌身離さず持ち続けていた
結婚式の写真から作ったテレホンカードと一緒に
肌身離さず持ち続けていた
何があろうとずっと二人の味方でいよう
何があろうと二人を守り続けよう
何があろうとずっと抱きしめていよう
「奥様が全て」と「何があろうと二人を守り続けよう」とおっしゃる貴殿のお気持ちがきっと伝わりますよ。
貴殿は私よりも少しばかり年上、奥様はママリンより少しばかり年下です。
つまり同じような年齢層にいます。
更に同じような状況を持ち合わせています。
詳しいことはWeb上では申し上げませんが、何かの機会におお伝え出来ればと思います。
とにかく、奥様を大切にしてあげて下さい。
地球上のどんなものより大切でどんなことがあっても寄り添っていなければならない筈ですから!
すぎちゃんさん
そうですか。同じような年代なんですね。
そのことは嬉しく思いますが、同じような状況でないといいのですが…
機会があれば、お話したいところですね。
ありがとうございます。