2017年2月18-19日
八ヶ岳
あの時と…
初めて八ヶ岳に来たときに選んだ登山口は、ここ渋ノ湯。もう下山してきたのだろうか、ちょうどお昼頃の渋御殿湯は、カラフルな登山者達の明るい声が響いていた。と思う。正直よく覚えていない。
そんな明るい出来事とは無縁だったが、この時は体力と感覚を取り戻したかった。そう思っていたのは良く覚えている。また、それだけでなく、何より大自然の慰めが欲しかったのだろう。
黒百合ヒュッテ前も、楽しげな雰囲気に満ちている。
良い時間になってきたので中山峠へ。登り出ると、ちょっと恐ろしげな雰囲気が漂い、たじろぐ。
不気味な何かが空を行くが、その隙間から届く光が何かを語りかけてくれているよう。しかしながら、その言葉を理解することができない。
ただ、寒い。そして、孤独が身に染みる。それでも、目の前で展開する世界は美しくも荘厳。
そう感じることができたのが嬉しい。
静かな心でそっと受け止める。
翌朝、黒百合平はガスに覆われていた。
再び中山峠に上がり、これから向かう天狗岳と対峙する。雲かガスか雪煙か、強い風に押されたそれは、白きお山の上を駆け抜け、青き冬空を露わにしてゆく。
そう書いてみるものの、この時のことは良くは思い出せない。
覚えているのは、歩きながら大峰のことばかり考えていたこと。寒波により相当に雪が積もったらしく、この時の私には、とても登ることができないと思え、唯々悔しかった。
東天狗から西天狗へ。
そして、天狗ノ奥庭方面へと降る。
知ってか知らずか、歩いているのは、あの時と同じ道程。
印象的だった凍りついた擂鉢池は何処へやら。
テントを張ったところも、あの時と同じ。
無事にテントまで帰ってきて、ほっと一息。何とか歩くことができたことにも、ほっとする。そして、微笑んでくれた冬のお山に感謝。
私が知る限りの中で最も美しい天狗岳だった…
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II