2010年1月9-10日
大峰

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導かれて…


冬の古田の森にはずっと憧れていた。できれば釈迦ヶ岳に登りたい。千丈平までならなんとか行けるかも。しかし、訪れる人の少ない冬の大峰の厳しさは、はるかに高名な山々にも決して劣らないかもしれない。

大きな不安と小さな期待が入り交じる中、登山口を目指して雪の林道を車で上っていく。下の不動小屋谷の登山口を過ぎると雪が多くなり、なんとか越えていくが、ついに進行不能状態に。バックして再突入したりでがんばるも無駄な努力。諦めて少し下の広い場所に車を止めた。

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そんなこんなで、用意して林道を歩きはじめたのは9時25分。風がなく穏やかだが、天気は曇りでちょっと冴えない感じ。しかし、林道を覆ったなんの跡形もない雪を踏みしめて歩くのは気持ちが良い。
登山口から階段を登っていくと、もちろん人の踏み跡は全くないが、動物の足跡が登山道に沿って上に続いている。

まだまだ余裕で遊びながら。

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尾根に出るとだんだんと雪の量が増えてきて、吹きだまりや少しの段差でも乗り越えるのが大変だ。規則正しい動物の足跡は、吹きだまりも軽快に越えている。しかし、我々はそうはいかない。雪が浅く固そうに見える所を選んでそお~と進むが、たびたびズボッとはまって立ち往生。穏やかに続く稜線も雪をかきわけ進むのは容易ではなく、嫁さんは暑い暑いとジャケットを脱いで必死の行軍状態。

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1時間30分程歩いて、「だいぶ来たかなあ~」と思っていると何やら標識が、「ええ~、まだこんなとこ~」といったかんじで二人で顔を見合わせてびっくり、下の登山口との分岐点だった。

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その後も一歩一歩の前進でじりじりと標高を上げていく。重い荷物を背負った巨漢の私が先に行くと直ぐにはまってしまうので、嫁さんが先頭を買って出てくれる。普段は、私が先に行くと知らんまに嫁さんを置いていってしまうので、嫁さんが前を歩くのがわが家の流儀だが、今日は積極的な意味で前を歩いていく。

下から途切れることなく続く動物の足跡は、さらに上に向かって規則正しく続いて、嫁さんは、この足跡を目安に進んでいるようだ。

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気がつくと天気が良くなってきていて、時々澄んだ冬の空がのぞいてくる。そして重い雲はどんどん風に流され、青空と雪が作るコントラストが、あまりに眩しく美しい。

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泊に最適そうな広い雪面がたびたび現れ、「もうここらへんでええか」と荷物を降ろしたい誘惑にかられるが、動物の足跡は、さらなる高みへと続き、我々を「おいで、おいで」と誘っているようだ。

釈迦ヶ岳は雲に隠れて見えないものの、天気はますます冴えわたってくる。

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そして、14時30分、やっとの思いで目標地点の千丈平に到着。

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さあ、どうするか。ここまでの行程を考えると、ここからの登りがちょっと微妙。しかし、この天気はまたとないチャンス、行くしかないと意を決して急坂に取り付いた。

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途中でザックをデポして必死で登っていくと、いつのまにやらあの足跡がなくなっている。動物は夏道を知っていて、それを忠実に辿っているのかもしれない。頭だけ飛び出した奥駈道の標石を過ぎるとあと少しの登り、ところがところが、あの足跡が再び現れ、我々を最後まで導いてくれる。

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もう障害は何もない。本当に最後の細尾根を雪に足を突き刺して登り、抜けるような青空に向かって飛び出した。

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思わず拳を突き上げ「よっしゃー」と雄叫びをあげる。感極まった嫁さんの頬には大粒の涙。15時30分、雪化粧をまとったお釈迦様が迎えてくれた山頂は、言葉ではとても表せない素晴らしいものに満たされた。

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降りは、ずっこけながら。
千丈平に戻って、今宵の宿の準備、整地してテントの設営が終わった頃にはもう暗くなってきた。

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雪を溶かして水を得るが、最初の水ができるまでがちょっと辛い。
飯を食うと、全身を倦怠感と眠気が襲い、朝まで爆睡。

翌日は、ガスで真っ白。夜中から降った雪であれだけ深く付けた踏み跡が全く消えてなくなっている。横殴りの風が吹きつける中、ルートを外さないように慎重に進み、無事登山口に戻った。

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とても登れると思ってなかった冬の釈迦、天候も味方してくれ、今回もラッキーな山行となった。誰も踏んでない雪上を歩くのは厳しく、夏なら2時間で登れるところを我々は6時間かかって登った。

でも、いつも嫁さんに言っている。「山で競争しても仕方がない。登頂できなくてもよい。行けるとこまでいけばよい。人が一日で登る山に二日かけてもよいではないか。」と…

撮影機材
Panasonic Lumix DMC-FT1

14 コメント

  1. Sakai

    雪の世界に魅了されているようですね。
    4,5月あたりに北アでも行きませんか?
    からさわベースで遊ぶのも良いですね。

  2. “すぎちゃん”

    冬の釈迦、それもこの素晴らしい青空の下で登頂されるのはお見事!
    ツボ足ラッセルは相当な厳しさだったことと思います。
    本当に頼もしい奥様ですね(^_-)-☆
    雲に包まれた八経は容易に人を寄せ付けないように見えます。
    それに対して南へ続く稜線が暖かく感じます。
    私も純白の釈迦、いつかは登ってみたいです!

  3. ayaG

    湿度が高いのか、全山樹氷ですね。
    雪は地表の凸凹を無くしてくれますが、
    ツボなら深みに脚を取られてびっくりしますねー。
    160cm位のスキーで登ると楽できるかなーと
    思いました。
    まずは無事下山できて良かったです。
    御夫婦で山に入れるなんて羨ましいです。
    FT-1の画像も素晴らしいです。
    目が痛くなるほどの晴天の様子が浮かびます。

  4. たかっさん

    はじめまして
    明神平につづき純白の世界でテン泊、もう凄いとしか言えません!
    ーいつも嫁さんに言っている。「山で競争しても仕方がない。登頂できなくてもよい。行けるとこまでいけばよい。人が一日で登る山に二日かけてもよいではないか。」と・・・ー
    いいなぁ~同感で~す。楽しく歩けたら一番いいですもんね!
    また、遊びに来させていただきますね!

  5. ふぇるめーる

    パンダさん
    空の藍色と雪のコントラストが最高に気持ちいいです。
    枚数もいつもより多いですね。
    春と夏、冬とではこれほどまでに見える風景画が違う!
    流石です。

  6. ヒロ

    この空間を奥様と共有できること自体が素晴らしいですね!
    美しい冬の釈迦を堪能させていただきました。

  7. パンダ

    Sakaiさん

    北ア?
    いよいよかっこええピッケル買いにいかなあかんかも。

  8. パンダ

    すぎちゃんさん

    ツボ足厳しかったです。
    もともと足の速くない私が、雪の上ではさらにドン亀になることがよく分かりました。
    雪にうまく乗って静かに歩く練習が必要なようです。もちろん、楽するためです。

  9. パンダ

    ayaGさん

    ゲレンデでのスキーですら苦手なので、山歩きにスキーはとても無理だと思いますが、得意な方はうまく活用されているようですね。
    スノーシューも考えたのですが、アイゼンでの歩行に慣れようとがんばってみました。

  10. パンダ

    たかっさんさん

    はじめまして。
    楽しく自然を感じながら歩ければと思っています。ただ、わが家の場合、朝の行動開始があまりに遅かったりして、もうちょっとスピーディにしたいなあと思っています。

  11. パンダ

    ふぇるめーるさん

    天気が良いと本当に明るく眩しくなります。
    私は、見ている風景の色が変わるのでサングラスが嫌いなのですが、帰りに目が焼けて痛いです。
    露出も普通ではないようなシャッタースピードになったりして、びっくりしたりします。

  12. パンダ

    ヒロさん

    嫁さんは、夏より冬の方が好きみたいです。
    これからも一緒に山歩きを続けられればと思っています。

  13. スロートレック

    パンダさん?釈迦をテン泊装備でツボ足ですか!?
    なんてチャレンジャーなw( ̄ー ̄)
    でも獣の残したトレースに導かれてお釈迦様に
    会いに行くなんてステキですね♪
    奥様の感涙、きっと古田の森の霧氷にも負けない
    美しさだったでしょう

    >人が一日で登る山に二日かけてもよいではないか

    ですよね。我が家も同じこと言ってます(^-^ )

  14. パンダ

    スロートレックさん

    はい、スロートレックさんご夫婦のような楽しく安全な山行ができればと思っています。
    当日は、トレースのないまっさらな雪の上を歩けるというこれ以上ない贅沢を味わえました。
    それゆえに辛い面もあったのですが、大きな感動も得られてよい山行になったと思います

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