2010年10月17日
奈良県 天川村 弥山川
弥山の壺・・・
テラスから見る圧倒的な双門大滝。しかし、その滝壺は、垂直に聳立する大岩壁に守られ、険悪な弥山川ゴルジュを突破した数少ない者のみがそこに立つことを許される聖域。
そこにはいったいどんな世界が待っているのか、妄想することしかできなかったが、その妄想を現実へと変える時がやってきた。
短い秋の日のこと、まだ暗いうちから熊渡を出発、そして薄明るくなってきた白川八丁を歩いて行く。
ガマ滝を越えると、いよいよ弥山双門ルートのはじまり。
モト中さん、何ぶら下げてんの。
木の根っこが無数にはり巡る強固な大地と豊かな森は、弥山の水の源。明るい川底とも相まって、その水は極めて美しく、少々の雨程度では、決して濁ることがない。
大岩ポイントを過ぎると、まもなくで一ノ滝、二ノ滝が見える大きな岩盤上。小休止で先を急ぐ予定だったが、なぜか大休憩。
スーパー沢屋がゴルジュを越えた後は、双門大滝の下からルンゼを登って登山道まで達するという。それならば、そのルンゼを下降すれば、行けるのではないか。ただ、沢屋の中でも超スペシャリストが登るルンゼは、どんなものかは全く分からず、実現は簡単ではないように思えた。(事実、簡単ではなかった。)
しかし、またしてもスーパーな関東組の滝屋が、この難関を越えることに成功。滝オフで知りあったひこさんと我々も行こうと機会をうかがっていたわけだが、関西中心のメンバーの多い某コミュニティを率いる痛モト中さんが加わり三人でのトライとなった。
吊り橋を渡ると剣城と呼ばれる絶壁につけられた梯子、鎖場のおなじみのルート。
モト中さんの辞書には、「疲労」という文字はなく、グイグイと突き進んでいく。ひこさんは、軽快な身のこなしが素晴らしく、二人とも特徴的かつ強靱な身体能力を持っている。
「待ってくれ〜」と心の中で叫びながらもついていくと、あっという間にテラスに到着。
今日の双門大滝は、紅葉が美しく彩り、水量もそこそこあっていい感じ。まだ見ぬ仙人ぐらの底には、何があるのだろうか。
ここから下降ポイントを探して移動、対面の頂仙岳方面の綺麗な紅葉も見える。
そして、期待と不安の入り交じる中「さあいくぞ」と下降を開始。
最初は、そうでもないが、だんだんと傾斜がきつくなってきて、急峻なルンゼに吸い込まれていく。なんとか降れるものの崖の上で行き詰まってしまい、右へ左へとガレ場のトラバースを繰り返しながらの慎重な下降が続く。
そして左に樹林帯が現れ、何となくこの樹林帯を伝って降りていけば、より安全にいけるのではないか、そう思って偵察しながら進んでいくと、やがて川底の流れが見えてきて喜んだが、そこはなんと、双門大滝の落口の上だった。直ぐ先には、三鈷滝も見える。
しかたがないので、先の樹林帯の切れ目まで戻って、ガレの続くルンゼをさらに下降。とにかく岩がもろくて落石の巣窟で危うい。固まって通過したり、一人ずつ通過したりと事故のないように降りていく。
そして、ルンゼを降りきって大岩の上に立つが、その先はスッパリと切れ落ちていた。
ここからは、弱点を探りながら上流方向へトラバース。やがて双門大滝が見えてきて大興奮。最後の難所を懸垂で慎重に降りて、滝壺へと到達した。
本当に夢のようだ。そこにあるのは、双門大滝以外のなにものでもない。下からでは、段瀑になっている滝上部は全く見えないが、そんなことはどうでもよい。なにより、その透明極まりない水が素晴らしく、大きく深い滝壺に吸い込まれていきそうだ。
大滝と仙人ぐらの圧倒的な壁もここからではやけに縮こまって見えるが、逆にもの凄い存在感で迫ってくる。
さいはて感や秘境感も尋常ではなく、紀伊の滝を愛する私としては、まさに神の領域に足を踏み込んだようにさえ思えてくる。
一方で、若い二人は、先ほどから何やら忙しいと思っていたら、こんなとこでも楽しむことを忘れない。撮影で動き回っていても寒いんやけど。
気がつけば、二時間も経っている。名残惜しいが、帰らねばならない。取り付きを登りながら何度もふり返って感動を焼き付けた。 帰りもモト中さんがグイグイと引っ張ってくれ、無事下山。
苦しい登り返しの途中からは、ガレ場を避けられるルートを見つけ、下降点と違うところに飛び出した。
夕暮れの白川八丁を行く若い二人。これからも楽しみ。
人が行くことができないところ、いや、人が行ってはいけないところ。双門滝の下とはそういうところだと思っていた。
もう何も言うことはありません。ただただ、すべてのことに感謝するだけです。
同行いただいたひこさん、モト中さんありがとうございました。そして、先駆者のB A Lさん、はんぺんさん、もりもとさん、今回もありがとうございました。
撮影機材
Panasonic Lumix DMC-GH1LUMIX G VARIO HD 14-140mm/F4.0-5.8 ASPH./MEGA O.I.S.
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
Panasonic Lumix DMC-LX3
これには参った!
まさに『壺』の底ですな。天は狭く見えたのでしょうか。それとも意外と広かったのでしょうか。興味は尽きません。
しかし落差80mの滝を浴びるワカモノ・・・もしかしてこれが目的だったのかな?
PS:拙ブログでパンダさんのことを記事にしてしまいました。断りもなく書いてしまいましたが、お許しください。
素晴らしい景観ですね~
なんと美しい滝壺なんでしょう。
今年は暑い時期が長かったとはいえ、
10月に滝壺で泳ぐとはツワモノたちですね~(笑)
いや~ 素晴らしいものを拝見しました。
私の方は今シーズン、春の前鬼川のみで
どこにも行っておりません。
来年に期待です。
>人が行くことができないところ、いや、人が行ってはいけないところ
まさに、その通りだと思います
圧倒されて画面から目が離せませんでした
これは神の領域ですね、こんなところまで行くと
もう他にはパンダさんを満足させる場所が
無くなるのでは・・・
前回の剱沢は羨ましく思えましたが、こればかりは
世界が違いすぎて、羨ましいなんて越えちゃいました。。。
夢・憧れ・幻の双門の滝壺に連れて行っていただき本当にありがとうございます。
あれ以来色々ご教授いただき感謝・感謝です。
家でロープ結んだりして頑張ってます。
これからもよろしくお願いします。
とりあえずザイルを購入したいので、雨の日に登山用品店に一緒に行ってもらえませんか?
ちなみにマムートのATCは衝動買いしちゃいました。
双門大滝を見たいなと思いつつ、梯子の恐怖に未だ行動できないでいます(情けな~)
しかし、こんな夢のような場所があるのですね!
滝壺に浮かぶ緑の妖精さんが良いですね。
臆崖道さん
天は広くはないように思いましたが、上から見るあの感じとは違い、決して閉塞感、威圧感のあるようなところではなかったです。また、非常に穏やかで心地よく、心洗われるような場所でした。そして、特別な何かを感じるところであるのは、間違いありません。
もしチャレンジされることがあれば、お役にたてるとは思います。
彼らは、もし到達できたら記念にぜひともと言っていました。
愉快で楽しく、障害もその元気なパワーで跳ねのけてしまいますし、まだまだ誘惑や楽しみのたくさんある年代ですが、苦労してもそこへ行きたいという滝への純粋な想いを持っています。
ヒロさん
苦労はありましたが、美しい景観に癒されて帰ってきました。
彼らは、本当にツワモノで、いつも驚きの連続です。
来シーズンは、ぜひともご一緒したいです。
スロートレックさん
神の領域なんてたいそうですが、そう言いたくなるほど素晴らしいところで、夢のような一日でした。
>もう他にはパンダさんを満足させる場所が 無くなるのでは・・・
いやいや、まだまだ行きたくても行けないところがたくさん残っていて、日々妄想はつきません。
モト中さん
こちらこそありごとうございました。
登山用品店もおもしろいから、雨のトレーニングとセットで行きますか。
たかっさんさん
たしかに梯子や鎖場があって普通の登山道とは違いますが、よく整備されていますし、恐怖よりもこれは面白いとなる可能性大です。
双門滝以外にも見どころ満載の素晴らしいコースですので、ぜひぜひ行ってみてください。
パンダさん、はじめまして。奈良のdahanと申します。
大峰の先輩、臆崖道さんの記事より、お邪魔させていただきました。
いきなり双門滝の写真にぶったまげました。
なんか滝の迫力にに取り付かれたように、写真から目が離せません。
他の記事も少し拝見させていただきましたが、こんなにグッと目の前に迫ってくるような滝の写真は見たことがありません。
美しさと迫力に感動しました。ぜひまたお邪魔させてください。
ぱんださん
お疲れ様です。
なんか凄い処ですね!びっくりしました。
滝つぼもしっかりあるし、これは下まで降りて見る価値のある美しい滝ですね。左岸の岸壁も迫力があるし、凄すぎですわ。
一人で行ける様な安易な場所ではないし、道もかなり大変だったと思います。ルンゼ降りの写真を拝見するにとても厳しい感じが十分伝わります。まずは無事なご帰還よかったです。
dahanさん
はじめまして。
写真、ご評価いただきありがとうございます。
dahanさんのブログ等は、以前より拝見させていただいていました。
今後ともよろしくお願いします。
ふぇるめーるさん
ありがとうございます。
滝下は、岩に弾けた飛沫の飛び散る荒々しい感じを想像していましたが、きれいな壺のある穏やかな雰囲気に驚きました。
体力的に厳しく、危険もともないますが、ふぇるめーるさんには、ぜひ見ていただきたい素晴らしいところだと思います。
パンダさん
初めてコメントさせて頂きます。
双門大滝の滝壺に行かれるとは・・・。
すごいですね・・・。
写真を見ながら、言葉が出ませんでした。
当方、地図も読めない、メットもない、ロープの使い方
も全く知らない滝メグラーですが、いつか、死ぬまでに
1回は行きたい、と思ってしまいました。
*そのくせ、前鬼の三重の滝に単独で行き、大変な
思いをしましたが・・・。
いきなりすいませんが、いつか、是非、ご一緒させて
ください。
失礼しました。
koyamangenさん
はじめまして。
ブログ拝見しました。精力的に滝巡りされてますね。
私は、単独行が多かったのですが、今年は、多くの滝好きな方と一緒に楽しく滝に行くことができました。
koyamangenさんともご一緒できれば、楽しいと思います。
また、のぞきに来てください。
先ず最初にお礼を
「小生の久し振りの投稿に早々のコメントを頂戴し大変嬉しく思っています。まだまだ頻繁には出来ませんが宜しくお願い申し上げます。」
いやいや参りました。
正直申し上げて私はこの先も双門大滝はテラスからしか眺めることは出来ませんから!
この神の領域へ迎えられたパンダさん、そして同行メンバーの勇気に拍手です。
こんな大きな滝壺があるんですね~!!!
秋の弥山川、最高です。
すぎちゃんさん
いらしていただき、ありがとうございます。
僅かずつでも前に進んでおられるようで何よりです。
大きく深い滝壷は、本当に美しかったです。到達できた喜びや感動がよみがえってきて、いまだ興奮さめやらずといった感じです。
ありがとうございます。