2011年3月5-6日
奈良県 大峰山脈

 

 

弥山が呼んでいる・・・

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坪ノ内林道を行くと、北側に雪が吹きだまっている。やがて雪に乗り上げて車はストップ。ひょっとして上まで行けるかもというあまい考えは打ち砕かれ、林道を歩いてのスタート。

暖かい日が続いていたが、ひな祭り寒波到来で様相は一変。既にこのあたりから真っ白で、まさに厳冬期の雰囲気。



途中からこれまで無かった単独者らしきトレースが出現、昨日あたりは、車が上がれたのだろうか、川合から登ってきたのだろうか。

登山道を行かずにそのまま林道を奥へ、再び登山道が林道近くに降りてくるところもやり過ごして進むと、それ以上行けなくなって失敗。しかたがないので、適当に斜面を登って登山道に出た。



天気は冴えないが、冷たく静かで、はかない霧氷が覆い尽くす景観は、まさに冬の大峰。その美しさに立ち止まってばかりで、なかなか前に進まない。





栃尾辻を過ぎ、P1518へと直登ルートを行く。すると、空が明るくなってきて、幾本もの光線が伸びていく。その光に向かって飛び出して行くが、それは、なんとも鮮烈でドラマティックな瞬間。





飛び出した先には、「どっひゃー」の世界が待っていた。







早くも白全開で、こんなんを見ることができたら、もう今日は十分といった感じ。このあいだ登った稲村のギザギザも真っ白、空もますます冴えわたってきた。







P1518を越えると、さらに白さを増した森とふかふかの雪面が広がっている。新しい雪は、とても柔らかくて気持ちがよい。そればかりか下に締まった雪があり、ズボることなく快適。











続いていた単独者らしいトレースは何やら怪しく、あらぬ方へと消えて行った。大丈夫だろうか。





ずっとシャッターを押しまくってるけど、もうこのあたりからは、青と白の饗宴に目が回って、何を撮っているのかも分からない状態。気温が上がって霧氷がどんどん落ちてくるが、今日の霧氷は、簡単には無くならないようだ。







そして頂仙岳、なんとなくルートが分かりそうだったので、巻き道を行く。新雪にステップを刻んで問題なく通過。





高崎横手出合からは、予定通り狼平へ降らずに明星ヶ岳へ。ここから弥山までは、このルートのハイライト。広がる青空と分厚さを増した霧氷、冬の大峰の美しさと厳しさを全身で感じながら進んでいく。





ところが、次第に深くなってくる雪に足が取られてズボりだし、歩くスピードが急低下。背中の荷物が急に重く感じる。

「あぁ〜、今日も弥山に届かないかも。」



格闘する姿を見て、嫁さんが一言、「スノーシューあるやん」。あっ、忘れてた。せっかく持ってきたスノーシュー、贅沢にも女性用小型モデルをもう一丁用意した。早速付けると、推進力が全く違う。これなら行ける。





大きな弥山、八経が見え、エビの尻尾が伸びたトウヒの間を突き進んでいく。それは、アルペン的な木の無い山とは違う独特かつ素晴らしい景観、やはりこの山を愛せずにはいられない。













明星へ登ると積もった雪のおかげで大展望が広がる。



さあ行こう。そのまま稜線を辿って八経へ。少し降ってから、ふかふかとガシガシが入り交じる雪面を踏みしめて登って行く。











そして、ついにやって来た。あと少し、目の前に見える美しい尾根が「さあ来い」と呼んでいるようだ。



一歩一歩、慈しむように噛みしめるようにゆっくりと歩いて行く。今シーズン、ズボって開けた穴穴穴、幾本も引いたトレース、何回も刻んだステップ、それらのことが脳裏をよぎり、近付くにつれ熱いものが込み上げてくる。







今回ばかりは泣けるかもと思ったが、そんなことはなく、誰もいない山頂は、いつものように爽やかで清々しかった。









錫杖の周りを踏み荒らすのは躊躇われたが、そこを越えて急降下。今日歩く最後の稜線を辿っていく。



国見八方覗に着くと、単独の方らしいトレースを発見。「やっぱりスーさん来てはったんや〜」などと嫁さんと冗談を言い合っていたが、帰って本当にそうだと分かって、びっくり仰天。なんと聖宝谷を登ってきたとのこと。我が家も来シーズンは挑戦したいものだ。

今年もここにテントが張れて幸せだ。そんなことを思っていると事が始まりだし、なんとかそれが見えるところまで慌てて駆け下りて行く。トウヒに付いた白が紅に染まりだし、自然界にしか無いような色に満たされていく。

そして、滅多に巡り会えないであろうその光景にただただ立ち尽くすのみだった。



しかし、素晴らしいドラマは、ほんの一瞬の出来事。やがてお日様は、その姿を滲ませながら消えていった。



興奮で眠れないかと思ったが、いつものように爆睡で夜が明けた。



ガスに覆われていて、残念ながら朝のドラマは無し。







狼平経由の下山は、ふかふかの雪が気持ちよく、今日も美しいトレイルを楽しんだ。







今年は、ダメかと思った弥山。それがそれが、なんと素晴らしかったことか。今回も全てのことに感謝あるのみです。

ありがとう大峰・・・



撮影機材

Canon PowerShot G12
Canon PowerShot S95


12 コメント

  1. “すぎちゃん”

    3月5日
    今冬最高の大峰でしょう!
    年末年始の新雪は本当にフカフカ過ぎて歩きにくいですが、この時期は雪も締まってきて、適度な新雪が積り、且つ霧氷に覆われれば、これ以上の条件はないでしょう。
    そんな条件に抜けるような青空!
    これが今冬週末皆勤賞なのかも?
    素晴らしい賞がいただけて本当に幸せイッパイですね~☆☆☆
    初日の写真の多さ、お気持ちが良く伝わってきま~す!!!

  2. 関東の渡辺

    凄い景色ですね。
    青空と相まって最高です!

  3. パンダ

    すぎちゃんさん

    こんなに遅いアップにもかかわらず、いつもいつもありがとうございます。
    本当にまたとないような素晴らしい条件に恵まれ、幸せいっぱいで感謝感謝でした。

  4. パンダ

    関東の渡辺さん

    はい、あの昨年の今ごろの最高に勝るとも劣らない最高でした。
    いよいよ滝のほうも本格化ですね。
    またよろしくお願いします。

  5. ヒロ

    寒がりの私には実際に目にすることができない光景ですが
    パンダさんのお写真で堪能させていただきました。
    春~秋の大峰しか知らない私にはすごく魅力的なお写真
    です。っていうかこれ、3月なんですよね。

  6. たかっさん

    いやぁ~参りました。
    素晴らしい写真で感動を分けて頂き、ありがとうございます。
    感動の大峰!体験してみたいものです。

  7. スロートレック

    素晴らしい!
    こんなお山に私も行ってみたい!
    って、行ってましたけど(^.^)
    そう思えるほど、それほど空の色が違います
    P1518直下の朝陽と霧氷、そして稲村の姿、もう最高です
    昨晩から何度も見直して、目がチカチカしてますよ
    独り占めの感動よりも、国見八方でバッタリの方が
    もっと感動してただろうなぁ、って、パンダさんの画像
    観てると、そう思いましたw( ̄ー ̄)

  8. パンダ

    ヒロさん

    はい、3月です。
    今シーズンの大峰は、本当に雪が凄くて、もうこんなことはないかもしれません。

    今年は、お時間が許せば、ぜひ沢にご一緒しましょう。

  9. パンダ

    たかっさんさん

    いかがされてますでしょうか。
    どこかで滑落の武勇伝は、お聞きしましたが。
    冬の大峰にもぜひ出かけて下さい。

  10. パンダ

    スロートレックさん

    本当に素晴らしい一日でしたね。
    こんないい時になんで誰も来ないのかななんて思ってましたけど、やっぱりお互いとことん好き者なんじゃないかと。

    もし、泊されてたなら、夕暮れを前に三人で涙してたかもですね。

  11. モト中

    なんとゆう事か。
    これが現実の景色か。

    これは僕も冬の大峰に飛び込んでゆかねばなりますまい。

    来シーズンもご指導よろしくお願いします。

  12. パンダ

    モト中さん

    ぜひぜひ飛び込んでください。
    来シーズンは、一緒にもっと楽しみましょう。

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